木曜日, 7月 31, 2008

Mt.Babel East Face, Ⅳ 5.11d 670m


Mt.Babel East Face

しばらく前の投稿 The main Objective of This Summer で書いた、去年からずっとトポを見ながらあーだこーだと考えていたルート、Mt.Babelの東壁を登ってきました。Moraine Lake から徒歩1時間ほどにある Consolation Lake という湖のそばに聳え立つ立派な壁で、Moraine Lake にいく途中の路肩からもよく見えます。目に入る度に気になっていたので、登ることができてすっきりしました。


6ピッチ目のフェースクライミング

そもそもの始まりは Fifty favorite climbs という本のなかで Mark Twight の Favorite Route として紹介されているのを目にしたときから。核心の11dを除けば、あとは5.10+以下のピッチが多く、行けば何とかなるかな、という気がしていて、あとは一緒に行くパートナーが現れるのを待つばかり。5月にスカハに一緒に行ったドイツ人のChristophにトポを見せ、下見で撮ってきた写真を送るとすぐにいい返事が返ってきた。あとはお互いの予定と天気の合致した日があればOK。数日前から天気をチェックしながら、電話で相談し、前日の夜の天気予報で翌日のGo Upが決定。7月は仕事ばかりしていて、全然クライミングどころではなかったけれど、それでも信頼できるパートナーと一緒でもあるし、なによりも久々のビッグルートに気持ちが高揚して、なんだか妙に自信があったり。とにかく楽しみで仕方がなかった。

細かいルートのことは下に書くとして、全体の印象から。

下部が傾斜の緩いクオーツァイトの壁に対して、上部は傾斜の強い(弱点以外は薄かぶり)石灰岩。Fifty FavoriteでMark Twightが”まるでVerdon(フランスの素晴らしい岩場)を登っているようだった、と述懐していたが、まぁそれはおかしな冗談で、岩はもろく、あるピッチのある場所ではほとんどのホールドが信用できない、という場面もあった。しかし、60mロープを常にぎりぎりまで伸ばして登っても12ピッチほどになり、そのスケールとストライキングで堂々たる風格のある壁は登るに値するものだと思う。おまけに下降もなかなかしょっぱく、ラッペル、クライムダウン、長い歩きありの3~4時間。最初から最後までアルパインクライミング感溢れる良いルートだった。毎週末こんなルートを登っていたら、すぐに落石にでも当たって死んでしまうかもしれないけど、夏の間、月に一回ぐらいはこんなクライミングをしたいものです。


いつもと違う風景 Mt.Temple と Tower of Babel

ルート詳細(ピッチ数はFifty Favoriteのトポを参照)


Mt.Temple East Ridge

朝4時にChristophをピックアップして、Moraine Lakeまで走る。そして5:15にパーキングを出発。Consolation Lakeまでは歩きなれた道。湖からはガレ場を横切り、いくつかの岩塔を回りこむように東壁の下に続くガレ場を詰める。朝日が当り始め辺りの山々が輝き始める。スタートは壁の右下にあるピラーの右側。雪が残っていてガリーまで行けないので、手前からダイレクトにスタートした。


Christoph on second pitch

1-3ピッチでピラーを登り壁とピラーのコルへ。ここまでは傾斜も緩く簡単。ただ浮石が多いので注意。


Christoph running up on sixth pitch

壁に移ると少し傾斜が出てきて6ピッチ目でプロテクションの取りづらいフェースの5.10+、プロテクションのない短いチムニーがあり、ドキドキする。ここまではクオーツァイトの壁。


バックパックを股につるしチムニーへ突入

6ピッチ目の終わりで壁を横断するガレたレッジに着き、ここから上は石灰岩の壁。明らかに傾斜が急になり、上を見上げるとヘッドウォールが覆いかぶさっているように見える。


Christoph on ninth pitch

8-10ピッチをChristophが一気にリードしたが、ここはテクニカルな5.10と泥で汚れた5.10+。泥に覆われたコーナーを荷物を背負ってレイバックし、最後に乾いた泥の上にマントルを返す、というとてもアルパインな感じ。しかし、Christophは泥を避けて登ったそうなので、必死で返した泥マントルは必要なかったかもしれない。


やさしくても脆いホールドが怖い

11ピッチ目はルートファインディングにやや手間取る。というのも下部は1ピッチ60mぐらいで表記されているのだけど、上部になるとどうやら1ピッチ40mか30mぐらいで書かれているようなのだ。なのでトラバースしなければいけない11ピッチ目をまだ10ピッチ目と勘違いし、そのまま直上しそうになった。登ってからこのままではヘッドウォールのど真ん中に突っ込んでしまうことに気づき、クライムダウン&トラバースで方向修正。


On the good ledge of eleventh pitch

ここからがこのルートの核心部。もろい急なフェースを上がり(12ピッチ)、短い傾斜したコーナーを回りこみ(13ピッチ)、そして11dと言われる薄かぶりのOffwidth(ちゅうと半端な幅の割れ目)を登る(14ピッチ)、5.10+のコーナー(15ピッチ)、そして5.7のフェースを経てトップアウト。


Christoph negociating on 14th pitch

13ピッチ目を僕がリードして、そのまま気づかずに11dと言われる核心部に突入してしまう。しかし、クライミング不足と荷物を持ったままだったのであえなくロープにぶら下がってしまった。そしてChristophが空身でトライ。さすがここ最近、バガブー、ワイオミング、ロッキーで登りまくっているだけあり、慎重にオンサイトしてくれた。しかもそのまま次のピッチも登ってしまった。やるな~。僕は荷物を担ぎ、エイド交じりでこの核心部を登る。エイド交じりとは言えかなり大変。相当疲れました。そして、最後の5.7を僕がリードして5:10にトップアウト。


Ten Peaks and Moraine Lake / Where should we go ?

壁を抜けると突然Ten PeaksとMoraine Lakeの谷が広がっていた。そして、黒い雲が近づき、雪のような雨がぱらつく。頂上はすぐそこのようだが、降りるルートがまったく分からないのですぐに下降を始める。


雪混じりの雨が降ってきた

北稜沿いに行こうとしたが、すぐに詰まってしまった。西側のガレ場を捜索するとラッペルの跡を発見。あとはトラバース、ラッペルを繰り返す。あとは概ね北稜沿いを進み、最後は稜線上をたどってTower of Babelとのコルに到着。ガレ場を駆け下りて8:45にMoraine Lakeのパーキングに到着。


On the way down to the parking

タイム:
5:10 パーキング出発
7:15 クライミングスタート
11:10 横断レッジに到着
17:10 トップアウト
20:45 パーキング到着

装備: 2 set of Camalots to no.3, 1 no.4, 1.5 set of Aliens to Red, 1 set of wired nuts, 2 60m ropes, lots of slings
その他に下降用にアイスアックスを1(雪が少なく使わなかった)、ハンマーとピトン(下降が心配な人は持っていく方がいいかも、ステーションはあるがボルト1本というのもあった、クライミング中は使用せず)

1 件のコメント:

brandon さんのコメント...

Awesome Jiro!

Brandon