出発は10月9日。パートナーの純一さんをカルガリー空港でピックアップ。ウィスラーに住んでいる純一さんとクライミングをするのは、去年初めてスコーミッシュで一緒に登って以来。初めて一緒に登ってGrand Wallに行けた信頼できるパートナー。用事を済ませながらカルガリーを抜けてひたすら南下してゆく。国境でアグリチェックというのを受けた。車の中の食料品を全部チェックしてアメリカ持込を制限されているものがないか、違法なものを持ち込んでないかを調べられる。特に制限品はなかったけど、持っている食料はちゃんと覚えておくようにと言われる。モンタナで天気が悪化し吹雪きの中南下を続け夜中にBoulder, Montanaのしなびたモーテルに投宿。翌日は朝から降雪。南に来たのに!?。天候を心配しながらソルトレイク近郊のLogan Canyonまで。ここで少しスポーツクライミングを楽しもうと思ったけれど、あまりの寒さに翌日はザイオン国立公園を目指して南下を続ける。しかし、天気悪い。ザイオンに着いてやっと悪天候から開放されたが気温は低くあまり南へ来た気がしなかった。
10月12日 キャンモアを出て四日目からやっとクライミング開始。4年前に訪れているCerebrus Gendarmeへ。久しぶりのクラッククライミングを楽しんでから、エイド入門ルートのTouch Stone 5.9 C1の1ピッチ目でエイドの練習。慣れていないのと恐怖心でC1でも結構時間が掛かってしまった。しかし、手順などは問題なし。夕食を食べながら翌日のプランを相談しているうちに何故かやる気が出てきて翌日一気にTouch Stoneを登ることに。もっと練習した方がいいかと思ったがなんとなく。
Touchstone 2Pをユマールする純一さん
10月13日 Touch Stone 5.9 C1。フィックスしておいた1p目をユマールで上がり2p目を自分のリードでスタート。小ルーフを越えたあとにC2っぽいセクションがありRPが役立った。4p辺りから傾斜が緩くなり、フリーとエイド交じりになり5Pあたりからはほぼフリー。もっと早く登れそうなものだけどエイドに身体が慣れてしまうのと、まだ身体がクライミングについてこないのでなかなかスピードが上がらず6P目の終わりで時間切れ。真っ暗ななかラッペルして敗退。ここザイオン国立公園はシャトルバスでアプローチしているので帰りの時間がきまってしまうのが残念だ。
10月16日 Organasm 5.11 C2。
楽しく登りづらい5.8のあとに4mほどのルーフクラック、C2もしくは5.12のフィンガークラックを登り、簡単な4p目。下降はブッシュを掻き分けて砂砂なガリーを降りるので3p目からラッペルした方がよかった。1,2Pをリード。ルーフクラックをO.S.することは出来なかったけど5.11-ぐらいのとても良いピッチだった。3P目は純一さんがリード。ナッツが効きまくるC1っぽいC2。このルートは強くなったらフリーで挑戦するべきクオリティールートだった。また来よう。
Touchstone 2P C2っぽいC1
10月17日 懲りずにまたTouch Stone。他のルートに行くという話もあったがやはり中途半端は気持ちが悪いので。1p目は前日にフィックスしていたので2p目を純一さんのリードから。効率は良くなって、身体も動くはずだけど劇的にスピードアップしているわけではないのでどんどん時間が無くなってゆく。結果は最終ピッチを残して敗退。また暗闇のなかをラッペルしてきた。ラッペルしているとしたの道路に救急車やらパトカーが集まって何か騒がしい。降りてみると自分たちの下で登っていたパーティーで事故。暗くてはっきりとは見なかったが、取り付きから少し離れた斜面に墜死したクライマーの亡骸があった。事情聴取を受けたけど、100mは離れていたので何も言うことはなかった。落ちていたロープが爆発したように芯が千切れていたので原因はロープの切断のようだった。
TouchstoneからThe Big Bend周辺のパノラマ
10月18日 エイドクライミングに飽きてきたので次はセント・ジョージへ移動してスポーツクライミング。ここではSnow Canyon State Parkのキャンプサイトへ滞在。一泊一サイト16ドルと高めだけど、環境も良いし、シャワーもあるので悪くない。ここからセント・ジョージ周辺の岩場を巡った。登ったのはSnow Canyon, Chukawalla Wall, Turtle Wall, Welcome Springs。ChukawallaとTurtleは町から5分で非常に便利な砂岩の岩場。Welcome Springsは町から40分ほどの荒野の岩場。あとUtah Hillという岩場に行こうとしたが自分の車ではちと無理そうだったので行くことができなかった。
セント・ジョージ周辺にはまだまだエリアがあり、砂岩、石灰岩、その他数種類の岩があり、また訪れても十分楽しめる場所だった。ただキャンプサイトはSnow Canyonぐらいであとは岩場のそばでキャンプになってしまうようだ。車のなかで眠れるなら多分良いのだろう。あといくつかの岩場に行くには車高の高い2WDもしくは4WDが必要。
10月22日。インディアンクリークへ移動。ほぼ一年ぶりの再訪に気持ちは高揚するが、風邪気味のため元気なし。インディアンクリークではSuperbowlというキャンプサイトに泊まる。他のキャンプサイトよりも道が良く、簡易トイレもあり、日の出が早く日の入りが遅いので秋にはここが良い。ちなみにキャンプは無料。水なし。フリーダム感溢れる素晴らしいところ。
インディアンクリークの典型的な風景
風邪をこじらせてしまい3日間ほどだらだらと過ごしたあと少しづつ復活してきた。しかし、足の親指に傷が出来てクライミングシューズを履くのが苦痛。しかも首も痛めてしまいなかなか調子が上がらなかった。ちゃんとクライミングが始まったのは26日から。そして11月8日までインディアンクリークの素晴らしい日々を堪能した。
潤いのない、しかし美しい砂漠の花
今回は行ったことのない岩場を出来るだけ訪れたかったので、前半は毎日違う岩場へ行くことした。
岩場とそこで登ったルートは以下の通り。どの岩場にも必ず一級品のルートと宿題になってしまうチャレンジングなルートがあるのがインディアンクリークのすごいところ。毎日毎日違うルートに触るのは本当に面白かった。
26日 Reservoir Wall
日向で登れる気温ではないので左のエリアへ
Reservoir Wall のボルダーで遊ぶ
Wiggling Worm 5.11 ×
Pente 5.11- O.S.
27日 Scarface Wall
宿題を片付けるために再訪。日向は暑く疲れた。
Sicilian 5.11 R.P.
短いけどテクニカルなオフフィンガー。コーナーの切り替わるところが核心。
28日 Broken Tooth
比較的小さい岩場だけど、ルートは長く、クオリティーは高い。
Rock Lobster 5.11 R.P.
最初のトライでO.S.しそうだったが9mほど落ちて首がまた痛くなった..。
30日 Second Meat Wall
ダートが車高の低い車にはちと厳しい。日陰のある岩場
Second Timer 5.10+ O.S.
Extra Lean 5.11+ ×
核心はバランスの悪いステミング+フィンガークラック。来年の宿題。
31日 Battle of the Bulge
今井君、サクちゃん、栄君がヨセミテから到着。今日から一緒。
The Black Corner 5.11 O.S.
Quarter of a Man 5.11+ ×
シンハンドの難しさを痛感。今回の練習メニューにシンハンド追加。
Battle of the Bulge 5.11 ×
シンハンドで撃沈。いつレイバックしていつジャムをするかそれが問題。
My Piece of Real Estate 5.11- O.S.
出だしのシンハンド核心。全体を通して面白い。
11月1日 4×4 Wall
日陰の岩場。暑いので結構混んでいた。
Marshmallow Safari 5.10 O.S.
ワイドハンドとフィストの綺麗なコーナー。
#12 Unnamed 5.11 R.P.
苦手なシンハンドを何とかするためにしつこくトライ。
3日 The Fin
今日も暑いので早く日陰に入る岩場へ。綺麗なコーナーが多い。
Unnamed (Nagasakiの右隣)5.11 R.P.
シンハンド課題。かなりのクオリティールート。
Skid Low 5.11+ ×
フィンガージャムかレイバックか。来年の宿題。
Brother from another planet 5.12-
今井君の撮影ついでにTRで。確かに面白いが..。
4日 Super Crack Buttress
Super Crack 5.10 O.S.
いつも人がいてやっていなかったので。登り心地は最高。
Coyne Crack 5.11+ ×
オフフィンガー、シンハンドと常に苦しいサイズ。来年の宿題。
レストの日 嵐の前兆
7日 Cat Wall
宿題山積みの最高の岩場。
Johnny Cat 5.11+ R.P.
3年前からの宿題。フィンガークラックを登りこんだせいか、すんなりR.P.
King Cat 5.11+ R.P.
これも3年前からの宿題。すんなりR.P.
8日 Broken Tooth
Gingivitis 5.10 O.S.
Polygrip 5.11+ R.P.
すべてのフィンガーサイズが揃っているルート。ぎりぎりのところでR.P.
嬉しかった。
今回はフィンガーとシンハンドという課題を作ってルートを選んでみたけど、それぞれそれなりに成果があった。しかし、そうかと言ってトレーニングのための岩場と考えるには素晴らしい要素が詰まりすぎているインディアンクリーク。来年も再来年もまた訪れたい岩場。今度は何に集中して登るか、どの宿題を片付けるか、そんなことを考えるだけどわくわくしてくる、とても大好きな場所。そんな場所を離れるのはいつも寂しい。今回は今井君、サクちゃん、栄君という強力なクライマーと一緒に登れたので色んな刺激を受けた。今井君、サクちゃんは1月にはパタゴニアへ。成果を挙げて無事帰ってきてくれることだろう。栄君は近々5.15でも登ってくれるのだろうか。自分も頑張って集中してクライミングに励もうと思わせてくれる若者達だった。
11月10日 Fine Jade 5.11 3ピッチと North Face 5.11 3ピッチの継続。
Rectory
前日にキャッスルバレーへ移動。Caslton towerとRectory。この二つの塔を一日で登るのが今回のプラン。5.11のピッチが二つあり、インディアンクリークでの成果を試すのに丁度良い。まずは日当たりの良いRectoryのFine Jadeから。のっけから傾斜の強いシンハンドに苦しむ。自分リードだがいきなりテイクしてしまったので下まで降ろしてもらい登りなおしてR.P. 5.11-ぐらいか?。次は純一さんがリード。苦手なワイドフィンガーを何度か落ちながらもフリーで抜けた。最終ピッチは簡単なクラックと5.11bのフェース。一箇所バランシーだけどO.S.
Fine Jade 2P 核心のフィンガークラック
そしてすぐにCasltonのNorth Faceへ。1p目が40mぐらいのワイドハンドから5.11のフィンガー。純一さんリード。スムーズに核心のフィンガーまでいくがここでテイク。フォローしてみると確かに難しい。無理にフィンガージャムをしないでフェースクライミングで登ることができた。次は登りずらいが楽なピッチ。そして最後にオフィズスとチムニー。さほど悪くはなく楽しいピッチだった。暗くなる前に下降も済んだし、自分的にはFine Jadeの2P以外は落ちずに登れたので良かった。
11月11日 モアブを去るのはいつも寂しいが今度はラスベガスへ移動。
セント・ジョージで一泊。ついでにVirgin River Gorgeというスポーツエリアで登り、それからラスベガスのレッドロックスへ。
レッドロックスでは数日登ったがアプローチを間違えるなどして長いルートはCloud Towerだけに留まった。Cloud Towerもやたらと先行パーティーがいて結局途中で時間切れ。まあ実力も足りなく5.11dのピッチはぼろぼろだった。
Cloud Tower 4P
ここでカルガリーから飛んできたO.J.と合流し、純一さんがバンクーバーへと帰っていった。ツアーももうすぐで終わる。O.J.合流後はスポーツクライミングと決めていたのでギアをしまい、セント・ジョージ方面へ移動。Virgin River Gorgeで二日間登った。キャンプ場は数マイル上流にあるCeder Pocket Camp site。一泊10ドル、水、水洗トイレあり。少しだけハイウェイの音は気になるが思っていたよりも良いサイトだった。岩場まで10分というのが便利。VirginではMentor 5.12bをR.P.してあとは5.13やら5.12dやらを触ってみた。まだちょっと時間が掛かりそうだけど、そんなにむちゃくちゃな感じはしないのでそんなグレードに時間を掛けてトライすのもいいかもしれない。Virgin River Gorgeはハイウエイのすぐそばで音はうるさいし、排気ガスのほのかな香りはするし、環境は悪い。しかし、それを補って余りある良質なルートが林立していて自分的には登り甲斐のある岩場だった。機会があれば喜んで登りこみたい。
その後はセント・ジョージで三日登る。O.J.はVirginで初5.11cを登り、ここでは初めて5.11bをO.S.するなど結構な成果を挙げていた。自分は5.12bぐらいの超甘い5.13a R.P.という微妙な成果。そんなこんなでとうとうクライミングは終了し、あとはあちこち観光しながらカナダへ向かうだけ。
O.J.の行きたがっていたザイオン国立公園でショートハイキングをして、Monroeという町にある温泉に宿泊し、あとはひたすら北上し11月26日にバンフに到着。
二ヶ月近いトリップだったけど終わってみればあっという間だった。成果はあったけど宿題は増えたし、これからどんなクライミングをしたいのかも少しは考えた。そしてこれから行かないと行けない場所も何となく検討はついた。大きなルートを登らない気楽なトリップだけど、グレードを上げるにはショートルートに集中する時間が必要なことも良く分かった。目標設定と集中。これだけは絶対に忘れないでクライミングをしなくちゃいけない。そうしないときっと強くなれないから。
純一さん、O.J. 楽しいクライミングトリップをありがとう。
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