木曜日, 1月 28, 2010

2/24-26 バックカントリースキー、偵察、そしてSea of Vapors..

アクティブな三日間があっという間に過ぎ去って行きました。

 初日。クライミングジム勤務明けでばたばたと準備してカナナスキスのBurstall Passへ。昨年Mellow Life・亮、淳也と一緒に行ってよい雪を堪能した場所。今回も期待通り良い雪でした。写真はハードスラブの上に乗った密度のとても低い雪を楽しむ妻O.J.とキャンモア滞在中のChi。滑りながら笑ってますね。そんな感じのコンディションでした。それにしてもここは雪はいいけど歩きが長い。

ふわふわの雪に自然とこぼれる笑み

 翌日はジャンボと未踏のルート探し。ジャンボはスノーシュー、自分はスキーという足回りでひたすらラッセルしてルートの取り付きまで行ってみる。それにしても雪が軽く、スキーはいいがスノーシューが潜りまくる。自分は軽いラッセルで進むがジャンボがかわいそうなくらい潜る。まぁ体力は自分の数倍ある男なので頑張ってもらってルートを観察してきました。そして目の前に出てきたのは。。なかなかかっこいい壁ではないですか。思ったよりも氷はないが手ごわそうなラインはありました。写真をみつつイメージを膨らませ手に汗握るとしましょう。

なかなかかっこいい壁じゃないですか!

 そして三日目はバンフの裏山 Mt.RundleのTrophy Wallにある"Sea of Vapors" Ⅴ 5.8 WI5+ 165m。

Sea of Vaporsは右の途中で離れている二本の氷を登る

 ランドルの中腹にある壁に今にも剥がれ落ちそうに張り付いたエレガントな白いライン。ハイウェイからも見え、いつもいつも下から眺めていたルート。いよいよそいつに挑戦する日が来た。しかし、なんでこんな疲れている日に来てしまったのだろうか。慢性的な疲れが溜まり足が重い、しかも暗くてアプローチで迷う。さらにはなぜかアイスクライミングのマストアイテム・ヘルメットを忘れてしまう!クライマー失格な自分。ネガティブな要素が多すぎるがだましだまし急斜面のアプローチをこなしてゆくととうとうTrophy Wallがその姿を目の前に現した。ジャンボが異様に興奮しだし、こちらは嫌でもボルテージが上がる。アプローチの急斜面をこなしてルートを間近で見上げるとまるでオーバーハングしているかのような迫力。

我々はボウバレーを覆う雲の上  

 緩斜面の氷と雪壁を登り1ピッチ目へ。ヘルメットを忘れた自分は強制的に安全にビレイできるピッチをビレイすることになり、最初の薄い氷を慎重にジャンボが登る。そして2ピッチ目はジャンボが岩のトラバースから岩に危なげに張り付いた薄く、不規則な氷、そして延々と続く傾斜の強い(というかルート全体がかなりぶっ立っている)氷にひたすらロープを伸ばす。3・4ピッチ目はビレイヤーに落氷の可能性があるのでヘルメットを忘れた自分がリード。厚さも不規則性も許容範囲な氷を氷の終わるこ場所までリード。最後は激しいシャワーが降り注ぎその激しさは沢登り級。二人ともすっかりびしょ濡れになり震えながら下降しました。


 朝の美しい雲海。壁を取り巻く幻想的な靄。素晴らしいクライミングと露出感から来る不安と快感。そしてやけどしそうなほど熱いパートナー。おまけに美しい夕焼け。実に、実に充実感溢れる一日でした。


土曜日, 1月 23, 2010

1/21 Ice Climbing "The Nemesis 160m WI6"

最近ちょっとづつ日が長くなってきているのを感じます 朝焼けのMt.Whymper

 ほぼひと月前にJNY(日本に帰国)と登ったThe Nemesisへもう一回行ってきました。

 ネメシスといえばカナディアンロッキーを代表するアイスルート。パートナーのジャンボも一度は詣でておいたほうが良いし、自分のトレーニングにもなるので二度目でも全然良い。今年のネメシスは状態がよくまったくWI6というグレードはないのでかなり気楽。疲れのたまった日には丁度良い。一昨日のSuffer Machineの教訓を生かし今回はスキーとスノーシューでアプローチ。雪が降っていなくて気温も高いといってロッキーの雪をなめてはいけません。ここいらの雪はアプローチが楽になるほど安定しない。クラストはしても下層の雪が砂糖のようになり手に負えなくなることも多々有り。スキーとスノーシューのお陰で今回は楽でした。朝焼けもやたらと綺麗だったので写真を沢山撮った。

Stanley Head WallのThe Nemesis周辺

1・2ピッチをつなげると70m 最後の10mは同時登攀

3pのジャンボ

 クライミングは1・2ピッチをつなげて登ったりしたので3時間半ほどで終了。車に着いても明るく、車窓からの風景がとてもきれいでした。疲れがたまり気味だったのでこれくらいでいいかな。次回はもっと厳しいのに行こう。

木曜日, 1月 21, 2010

1/18.17 Bear Spirit and Suffer Machine


 ながーい風邪からやっと復活!思えば辛い年越しと新年でした。新年会なのに水とお茶を飲んでいたり、咳がひどくて全然眠れなかったり、おまけに鼻腔から歯茎に感染が移って歯まで痛くなったり。何よりも辛いのはいくら良く寝ても全然良くならない!変な病気に掛かったかと思いましたよ。

 復活したのでクライミング再会。とりあえずクライミングジムで二日慣らした後、まずはミクストクライミングのクラッグエリア・Bear Sprit。バンフから車で10分、徒歩40分のこじんまりとした岩場。簡単な氷が2本、ミクストクライミングルートが10本ぐらい。M6からM9 までリードやらトップロープやらで登り、とにかく鈍った上半身を鍛えなおし。ここはハフナークリークほど混まないのでいつも居心地がよろしい。

M7のナイスルートを登るジャンボ

 そして翌日は3度目の挑戦、Stanley Head Wall, Suffer Machine V M7(or 5.6, A1) WI5, 200m。今回は世界のジャンボという強力なパートナーと共に。

Suffer Machine 赤線が大まかなライン

 最近あまり雪が降っていなかったのでなめてつぼ足で行くが、何とも安定していない雪でラッセルを強いられアプローチに2時間以上掛かってしまった。最初のピッチはM7かA1。ジャンボが果敢にフリーで行くが一部かなりホールドが悪く何度か落下。結局そこはエイドで抜け残りはすべてフリーで登っていった。しかも途中から弱点を突いていないボルトラインから外れ、ランナウトしながら薄い氷へ大胆なトラバースをこなしていった。散々なスタイルでフォローしてみてそのボールドさと冷静さと確かなテクニックに脱帽しましたよ。いわゆる“格”の違いってやつを見ました。今の自分では絶対にリードできないな。

本日の核心はこのトラヴァース (Photo by ジャンボ)

拡大するとこんな感じ(笑) フォローなのに悶絶している自分

2ピッチ目を自分がリード (Photo by ジャンボ)

3ピッチのジャンボ 氷のど真ん中を登ってゆく

 2-4ピッチは氷。ながーい氷。各ピッチ50mから55mぐらいで、WI5-WI4の傾斜が続く。最後のピッチはWI4 ぐらいなのに前腕とふくらはぎが悲鳴を上げなかなかスピードが上がらなかった。アイスもこれぐらい傾斜と長さが続くと非常に充実感あります。トップからひと月前にJNYとセットしたアバラコフを利用しながらさっくと地面まで下降。9:30スタートで16:00ぐらいに下降終了。3度目にしてやっと完登できました。やった!

金曜日, 1月 15, 2010

『銃・病原菌・鉄』 ジャレド・ダイアモンド




 また読んだ本のことについて書きますが、それはイコールあまりクライミングをしていないということです。あまりクライミングをしないで本を読んでいるということは、残念ながら、イコール体調が悪いということ。なんか先月の中ごろから咽頭系の調子が悪く、やたら炎症を起こしていて今は抗生物質を呑んで抑えているところなんですね。咽頭の感染が歯茎に進んで歯痛まで起こしておまけに咳の止まらない数日間などもあり、心身共にやられています。早く復活したい。

 えー、今回読んだのは『銃・病原菌・鉄』という大ヴォリュームな本。人類史に関する本ですが、焦点となっているのは「なぜ異なる大陸で人類は異なる発展を遂げたのか?」という謎。著者はすぐにある特定の人種の生物学的な優位性を否定し、文明の生まれた地域の環境的な差異を細かく検証してゆきながら文明の発展する方向性、伝播性、その盛衰などを考察してゆきます。環境的な差異でまず重要とされるのは栽培化に適した食物の分布、家畜化するのに適した動物の分布。なぜなら食料生産が始まり人口が増え集権化された社会ができると共に、技術や軍事力を高める余力がつく。するとヨーロッパ人が新大陸アメリカに進出していったような「持てる者」から「持たざる者」への流れが生まれてきます。
まぁ、ここまでは一般的な話なんですが、ひとつ自分には目新しかったのがそういった他大陸の侵略において大きな役割を果たした『病原菌』の存在。実はこの病原菌を育む要因というのは、「動物の家畜化」にあるということ。豚インフルエンザなんかもそうですが、多くの病原菌は動物対象として存在していて、それが変異して人間に感染するようになるそうです。しかしそういった感染経路を作るには動物が人間にとって身近である必要があり、家畜化というのは病原菌にとって新たな宿主を作る格好のイベントだったと。アメリカ大陸では動物の家畜化が、それに適した動物の少なさゆえ限定的だったのに対して、ユーラシア大陸では家畜化可能な(要は家畜にして有益な)動物の種類が多く、人間と家畜の歴史も長い。その長い歴史のなかで天然痘やらなんやらをどんどん培養して、侵略者と一緒にアメリカ大陸に輸出していった。天然痘は侵略者がアメリカ原住民を殺すよりももっと早く、しかも勝手に、敵の人口を減らしてゆく。そしてヨーロッパ人たちはすでにその病気に対して免疫を持っている。なんともアメリカ先住民に対しては不利な戦いだったわけですね。
 
 あともうひとつ面白かったのは、農耕など進んだ技術を持って別の地域へ進出していった民族がそこの環境に適応する形で狩猟採集民族へと逆戻りしていったパターンが多数あるということ。そしてそれと同じようなパターンがさらに高度な文明のなかでも起きているという事実。たとえば鎖国中の日本で銃の製造・使用に厳しい規制がひかれ江戸時代にはまったく銃の改良が行われなかったこと。ペリーさんがやってきて日本人は大砲の威力にたまげたらしいけど、もし江戸時代にどんどん銃器の改良が行われればそんなことにはならなかったかもしれない。中国でも多くの技術が生まれそしてヨーロッパとは違い多くの技術が失われていったようだけどその原因を国のまとまりに説明を求めているところなんかは結構面白い。ヨーロッパはずっと色んな国が入り乱れてある技術がある国で否定されても、隣の国がそれを選択することもある。しかし、中国は昔からひとつの国にまとまっている時間が長いからひとつの政策が何か有益なものを葬りさってしまうと、その技術は生き延びることができないという説明。
 
 上に書いたのはこの本のなかの本当に一握りの部分ですが、人類史を動かしたさまざまな要因を東アジア、太平洋域、オセアニア、新旧大陸の衝突、アフリカ大陸それぞれで具体的に検証しているので他にも興味深いトピックが満載でした。仕事柄ユーラシアからアメリカ大陸への人類の移動に関しては身近なトピックでしたが、その後アメリカ大陸でどう人類が発展していったか、それがユーラシア大陸とはどう異なっていたかなど特に興味深く読みましたね。

TEDで著者の公演を見つけたので貼り付けておきます。いかに文明、社会が崩壊するか、という公演ですがこの本と重なるところも沢山ありますね。“View Subtitle”をクリックすればサブタイトルを表示することもできます。もちろん日本語も。







木曜日, 12月 31, 2009

12/28 Mixed Climbing "Coire Dubh Integrale 5.7, WI3 550m"


クリスマスパーティー+Nemesisに続き、忘年会をやった翌日にCoire Dubh Integraleへ。場所は毎度お馴染みのヤムナスカの東、Goat MountainのA1ハイウェイから数えて二番目のガリー。なんのこっちゃという人が多いと思いますが下の写真のようにヤムナスカが見えるあたりです。パートナーは山に行きたくて仕方がないジャンボ。

夜明けのヤムナスカ

アプローチはNanny Goatなどと同じゴミ捨て場のパーキングからスタート。ゴミ捨て場を左から迂回しGoat Mountain沿いにどんどん歩く。最初の大きなガリーをパスしルートはまだ見えないが二番目のガリーを目指す。雪が少なければ1時間程度。

クライミング開始 WI3の氷から

ルート下部 とにかくどんどん登る

ルートはWI3の氷から。氷、雪、氷、雪とどんどんコンテで登ってゆくと氷が終わるところで30mほどの壁に当たる。ここは左の薄い氷(70度)のミックスか右の凹角の岩登り。左のラインが面白そうなのでここはリードさせてもらった。プロテクションもよく取れなかなか良いピッチでした。そこから先はまたもやコンテで雪、岩、雪、岩とどんどん登り、やがて稜線へ突き上げる大きなコーナーへ。この辺りはいくらでもラインが取れそうだけど今回は真ん中のラインを詰めてきたらこのコーナーへ辿り着いた。5.5から5.6ぐらいのクライミングを60m、プラス15mほどのおまけで稜線へ到着。そこでギアを整理しあとは稜線を登りLoder Peakの頂上へ。9:00に登り始め頂上へ着いたのが13:30。そしてそこからA1へ稜線通しに下り道路へ着いたのが15:30。思いのほか早く着きました。

左のミックスラインのビレイより 背後には平原が広がる

Loder Peak 稜線は風が当たり寒い

これから山に入るときの足慣らしに最適なルート。アルパインガイドの試験で使われるルートらしいけど、色々な要素が出てくるので納得。とても良いルートでした。

月曜日, 12月 28, 2009

12/26 Ice Climbing "The Nemesis 160m WI6"

左の氷瀑がNemesis、右はSuffer Machine

クリスマスパーティーを22時過ぎに引き上げ、ちょっと寝て4時に起き5時過ぎ出発。6時半にパーキングを出発し、2時間半ほどでクライミングの準備終了。アプローチ中はまったくの暗闇、ルートの下に着くころに明るくなってきました。冬至から数日経っただけなので悲しいぐらいに日が短いです。

1PをフォローするJNY

1p目はトポによるとコンディションが悪いことが多いピッチ。確かに悪いときはシャンデリア状態になりそうだけど、今日は氷が割れやすいのを除けばさほど悪くはないピッチ。そして2P 目は弱点を登れば楽しいばかりのお気楽ピッチ。この2ピッチを自分でリードしパートナーのJNYを核心の3ピッチ目まで温存。そして3ピッチ目。出だしはクラゲのような形状。しかしトラバースをしてゆくと次第に良い氷になり傾斜の強いクライミングが楽しめる。時々休めるスタンスがあり、スクリューもよく入るので決してデスペレイトではなく、ステレニアス感たっぷりな非常にエクセレントなピッチだった。70mロープなら終了点まで届きそうだが我々のロープは60mなので途中で切り最後の短いピッチをそのままJNYが登り終了。切った場所が悪かったのでしばし氷の落とせない微妙なクライミングだったけどJNYが慎重に登ってくれたので無傷でした。よかった。

核心の3PをスタートするJNY

4P目を登るJNY 氷を落とせない位置にて微妙なクライミング中

 2ピッチ目の終わりに荷物を置いてきてしまったのでアバラコフを作り50mラッペルで2ピッチ目の終わりまで下り、そこからは60mラッペル+3mクライムダウンで地面へ。9時半に登り始めて3時30分に降りてきたのでまずまずのペースでした。あと少しで帰国してしまうJNYにも良い思いでになったことでしょう。自分的にはいままでロッキーで登ったルート中ベストなルートでした。

下降はルートに向かって右の岩にもラッペル用のアンカーが見えたのでそちらからも可能。

12/25 Ice climbing "Bourgeau Left-Hand 185m WI5"


2ピッチ目を終わったところで上部に光が指してきた

アメリカをクライミングトリップしていたジャンボ氏とChiちゃんが帰ってきた。半年間ひたすら岩を触ってきたジャンボに足慣らしとして用意したのはこの界隈でもっとも暖かく、それでいてスケールがあり、ルートのクオリティも高い“ボージョーの左”。この前登ったばかりだけどこのルートかなり好きです。アプローチも40分と手ごろなのもポイントが高い。ロッキーにやって来たときの最初の1本としてもお薦めです。


慣らしなので簡単なピッチをリードするジャンボ

前回リードしなかった核心ピッチをリードした 程よい緊張感のWI5

今回は8時過ぎにパーキングを出て、2時にパーキング着。明るいうちに帰れるのって幸せだなぁ。そして夜はヤムナスカのクリスマスパーティーへ繰り出したとさ。


土曜日, 12月 19, 2009

"Being Caribou: Five Months on Foot with an Arctic Herd " written by Karsten Heuer



 久しぶりに長めの体調不良。12/11から喉の痛み→大量の鼻水→咳→熱→頭痛とめまぐるしく症状が変化してやっと12/17に復活の兆し。一時は医者から肺炎かもなんていわれて胸のレントゲンを撮ったりしていましたが、どうやらその後連絡がないので(このあたりがカナディアンシステムだなぁ)何事もなく終わりそうです。昨日は軽くジムで登ってみたがオーバーハングを登ると顔が青白くなっていた。しばらくは慣らし運転でいきます。

 というわけで引きこもって本を読んでいたので、また読んだ本の紹介。著者のKarsten Heuerさんは生物学者で国立公園のワーデン(レンジャー)。奥さんのLeanne Allisonさんは映像作家。この本で描かれているのはその二人が2003年春から秋にかけて季節移動するカリブーの群れと共に極北を旅した記録。ユーコン準州のOld Crowから出発し、アラスカのKaktovikの南、The Arctic National Wildlife Refugeで折り返し、またOld Crowまでほぼ全域をスキーか徒歩で踏破しつつ、カリブーの群れを追うという壮大な旅。カリブーの群れが子供を出産し、夏を過ごす北極海沿岸部のThe Arctic National Wildlife Refugeの一部1002 Sectionがこのストーリーのひとつの焦点。油田開発地として候補に挙がっているそのエリアは、カリブーの季節移動の折り返し地点であり、子供を出産する重要な場所。保護と開発の戦いが80年代から続いていて先住民グループの中でも保護派と開発派がいるという複雑な政治状況やブッシュ政権下の激烈な開発運動にさらされてきた背景があります。
 彼らの旅が強烈な政治的メッセージとなることは困難だったようですが、その体験(Being Caribou カリブーになる)から得たことは、一般の読者へ強いメッセージとなるように感じます。数字や生態の科学的な分析とは対極にある体験からくる身体感覚によって引き出されたメッセージがこの本の中にはたくさん詰まっていました。

 彼らのホームページ(Necessary Journeys)から"Being Caribou"のフィルムやその他背景を知る資料を見ることができます。ちなみに今年のバンフ・マウンテンフィルム・フェスティバルで上映された"Finding Farley"もかなり良かったそうです。ちなみにこのご夫婦、キャンモア在住だそうで。色んな人が結構身近にいるものですな。





火曜日, 12月 15, 2009

"Epic Wanderer: David Thompson and the Opening of the West" written by D’Arcy Jenish



デイビット・トンプソンって誰?という人のほうが多いと思います。自分も最近までそんな感じでした。

 カナダの短い歴史において19世紀初期というのは毛皮交易とそれに伴う西部開拓の時代と呼べると思いますが、このデイビット・トンプソンというのはその時代の代表的な毛皮交易会社ハドソンズベイカンパニーとノースウェストCO.で重要な働きをした人物。六分儀と天文学を駆使してまだ空白部だらけだった北西部を地図に記してゆきます。同時代にコロンビア川の河口が発見され、その頃まさにカナディアンロッキーをハウズパスから越え大分水嶺西部領域にたどり着いたトンプソンは大河コロンビア川の全域を解明し、モントリオールまで毛皮を運搬せずに太平洋へ直接運ぶルートの開拓へ乗り出しました。この本の中では毛皮交易ルートの開拓よりも彼のあくなき冒険心と地図の空白部を埋めるという野望がコロンビア川全域解明の動機としてドラマチックに描かれていますが、そこのところはちょっと鼻につく感じ。そのあたりは著者の想像に任せときましょう。
 
 コロンビア川河口までたどり着いたトンプソンはやがて毛皮交易から引退し、オンタリオのウィリアムスタウンで第二の人生を始めます。そして数十年の旅の間に集め続けた川の緯度経度を元にカナダの東と西をカヴァーする地図を作りあげます。それがこれ。1819年に作られたそうな。


 時はアメリカとカナダ自治区(イギリス)がお互いの領土を広げるために火花を散らしていた時代。現在のオレゴン州領域を得るためにトンプソンの地図は絶大な威力を発揮するはずでしたが、なぜか彼の地図はあまり省みられず、イギリス政府からもらった地図への報酬はたったの£150。年金を期待していたトンプソンにとってはかなりの痛手。やがて毛皮時代というすでに過去になるつつある時代に活躍したトンプソンは忘れられ、借金の返済にいそしむという不遇な老後を経て1857年に亡くなります

 1870年台。大陸横断鉄道建設の始まる時代。作成から50年の時を経てが彼の地図がここで活用されたというからその正確さには驚くばかりです。その頃ロイヤル・ティレル博物館の名になっている地質学者ジョセフ・ティレルがトンプソンの日記を編集し出版。これを期に死後30年経ってから巷の人々がトンプソンという人物の偉業を本当に理解しはじめました。生前に理解されず死後本当に評価され始めるという話はよくありますが、年老いたトンプソンが方々に借金のお願いに行き、省みられない手紙をイギリス政府へ送り続けるあたりのくだりは結構涙もの。詐欺同然の手に引っかかり毛皮商人時代に蓄えた資産をほとんど取られたりしてますからね。原野に長けた人間の都会での弱さがよく出てます。

 平易な英語で書かれているのでデイビット・トンプソンを知る最初の一冊に良いです。読むときはパソコンの前に行きGoogle Mapの地形地図を見ながら読み進めると面白いです。川を頼りに開拓が進むので現代人が移動するルートとはかなり外れていて興味深いですね。



日曜日, 12月 13, 2009

"Explorers of the infinite" written by Maria Coffey


寒い日が続いています。昨日は体感温度20度以下ということでハフナークリークへ。パートナーが風邪気味ということで早めに帰ってきたら自分も風邪をひいてました。喉が焼けるように痛いです。しばし休憩モード。

夏が終わってから色々と本を読んでいたのでそれの紹介。



サブタイトルに"The Secret Spiritual Lives of Extreme Athletes-and What They Reveal About Near-Death Experiences, Psychic Communication, and Touching the Beyond"。エキスパートアスリート、エクスリームスポーツアスリート(クライミング、ベースジャンプ、フリーダイビング、etc)、冒険家の極限の経験の末に現れるいわゆるベーシックな科学では説明のつかない体験、未知なるものの出現、究極の集中とそれにともなう世界との一体感などを紹介しつつ、それに答えようとする宗教や現代の先端科学を幅広く紹介しています。本の中に極限の状況に置かれた者とその愛する人との間に起こるテレパシーのようなものもたびたび紹介されていますが、著者自身かつての恋人をエベレストで失い同様の感覚を覚えているようで、どちらかというと一歩引いた立場から未知なる現象を探っているというよりは、よりそういった感覚に親近感を抱いている人間としてこのテーマに取り組んでいる様子。極限状態の末に現れる現象を科学的に説明してくれよ、という理性だけで読もうとするとあまり面白くないかもしれないけど、もう一歩入り込んで自分のプチ極限的体験と照らし合わせながら読むと結構面白いです。バンフブックフェスティバルにてJon Whyte Award受賞の良書。




木曜日, 12月 10, 2009

12/3 Ice climbing "Lone Ranger 120m WI3" & "The Chalice and the Blade 70m WI5"


Ranger Creek 奥エリア

 スタンレーヘッドウォール、ボージョーレフトと登った次の日はさすがに疲労感深い。なので近場のレンジャークリークへ向かいます。便利なところだけどさすがに3度目となるともうしばらくは来ないだろうなぁ、という感じがしました。前回は新雪のラッセルがあったので大変でしたが今回は雪も締まり踏み跡がないわりには楽なアプローチ。しかし、ところどころにデブリがあり、やはりここは雪崩れる場所なんだなぁと実感しました。手前にあるR&Dはもう二回登ったので一番奥にあるChaliceのエリアへ直行。

 今回登りたかったのはLone Ranger というルート。前回見たときは下部が薄かったので今回はもう少し氷が厚くなっているのを期待していきました。しかし辿り着いてみるとなぜか前回よりもさらに薄くなっている様子。あまり観察せずに取り付いてみたがどうやら20m以上はランナウト(アイススクリューなどのプロテクションを取らずに登り続けること)しなければならない。5mぐらい上がったところでしばらく優柔不断していたが気持ちが負けて降りることにしました。WI3ぐらいでプロテクションがないと登れないというのは何かが致命的に足りていないということではなかろうか。しかしどうすればこういう場面を楽しめるようになるのだろうか。課題ですな。

エクセレントな50m Chalice and Blade 

 Chalice and Bladeへ移動してJNYのリードで仕切りなおし。見た目よりもかなり傾斜があり、さらに寒さも加わりなかなかリードがスムーズに進まないようだった。途中で指に血液が戻る例の激痛もあったりしたようで刺激的なリードだったそうな。フォローしてみると所々わずかにオーバーハングしている場所がありなかなか手ごわかった。リアルWI5でした。上部は傾斜がないので割愛しアバラコフ(穴を開けた氷にスリングを通して作った支点)で下降しました。


Lone Ranger

 時間があるので今度はJNYがLone Rangerへトライ。5mぐらい上がったところで登れば戻れないようなムーブがありそこでしばらく悩んでいましたが、結局クライムダウン。この先のルートのことではなく、この先の冬のことを考えてしまったとか。その気持ち分かります。

 ひとつ先のムーブに集中できたら恐怖感は薄くなってゆくと思う。しかし、その先のムーブやその先のプロテクション、明日のクライミング、そのシーズンのクライミング、その先の人生などに思いが飛ぶと不安と恐怖で先に進めなくなってしまう。そうやって先を考えることは自然な思考の流れだと思うけど、クライミングの中の瞬間、瞬間にとっては“雑念”以外の何ものでもないということか。

 身体よりも頭が動いた一日でした。

日曜日, 12月 06, 2009

12/2 Ice climbing "Bourgeau Left-Hand 185m WI5"



 Bourgeauと書いてボージョーと読むこの山はサンシャインスキー場のパーキングの北にあり、ゴンドラからはこの大きな氷瀑もよく見ることができます。この辺りでは数少ない日当たりの良いルートで地形的にもヒートトラップになっているため、よく冷えた日に登るのがお薦め。あと何よりも気をつけたいのはこのルートの上部は巨大なボウルになっており、ドカ雪後は雪崩の危険にさらされます。パーキングが近いので国立公園が爆発物を使って雪崩コントロールをしているので、登る前にはバンフ国立公園のウェブサイトもしくはインフォセンターに確認を取ったほうが良いでしょう。

スーパー快適なファーストピッチ

 上部も2ピッチあり、最初はアプローチ的なピッチ、そして最後が核心のWI5。右側の岩に二箇所ビレイポイントがあるので好きなほうで切れますが、上のポイントの方が最後のリードが楽になるでしょう。今回はまだ氷が少なく(しかし登るには十分)グレード的にはWI4チックでした。

暖かさに和んでいるJNY

3P

最後の核心ピッチ

 各ビレイ点はボルトで整備されているので下りは懸垂下降4回。

 日当たり良し、ルート良し、アプローチ良し(40分)。最近日陰にばかりいたのでだいぶ癒されました。しかし、一度こういう日当たりの良いところで登るとまた日陰に戻るのがつらくなってしまいます。一日にしてスポイルされました。スタンレーヘッドウォールはやっぱり寒いですよ。

背後にはサンシャインスキー場のゴンドラ