日曜日, 8月 30, 2009

Mt.Sir Donald NW Ridge D-, 5.4 & 家族旅行

朝日を浴びるBonny, Asulkan グループの山々

今月中キャンモアに両親が滞在中ですが、仕事と自分のクライミングでまったく接待していませんでした。妻から“全員が満足できるプランを設定せよ!”というお達しがあり、頭を絞った末にグレーシャー国立公園の小屋に泊まり、妻&両親はハイキング、自分はクライミングパートナーとアルパインクライミングをするというプランを設定しました。自分も限られた休みをクライミングに捧げないといけない立場(?)なものでなかなか難しいものですが、結果的には皆が満足できる小旅行になったようです。よかった、よかった。

初日はのんびりとドライブをしながらグレーシャー国立公園を目指します。93号線を使って遠回りしながらラディウム・ホットスプリング、ゴールデン経由で行きました。クートニー国立公園を縦断する道路ですがのんびりとしていてなかなかよろしいです。マーブルキャニオンへ寄り、温泉でゆっくりとし、貸切の山小屋へ。

マーブルキャニオン

ラディウム・ホットスプリング

A・O・Wheeler Hutにてご満悦な二人

宿泊したのはカナダ山岳会が管理するA・O・Wheeler Hut。30人入れるところを貸切で使わせてもらいました。他の小屋同様食器類、調理器具等は揃っていて、水は近くの小川から調達。ただ駐車場から徒歩3分なので何でも持ち込めるのが便利です。1946年に建てられた歴史がぷんぷんとする素敵な小屋でした。グレーシャー国立公園のほとんどのトレイルが出発する場所にある小屋なので利用価値大です。両親も満足気な様子。こういうところでカナダらしさを楽しませてあげたいものです。


翌日は朝3時台に自分は起床し、夜のうちに来て車中で寝ていたクライミングパートナーのジュンヤと合流。暗いうちからMt.Sir Donald 3284mへ出発。まずはUto-Sir Donald Col 2535mへのアプローチ。とりあえず1200m、約3時間歩いて登ります。そしてそのコルからNWリッジに取り付き標高差750mのクライミング。ハットが1250mなので2000mちょっと登って下るわけです。森林限界を越えると綺麗な朝焼けでした。



コルにて身支度を整え最初はロープを着けないでクライミングスタート。登るにつれ身体の硬さが取れ、ロープなしで自分の思う通りにぐいぐいと登るのが楽しくなってきます。次第にジュンヤと離れがちになってきてしまったので傾斜が増してきたところで15mほどロープを出して同時登攀に切り替えました。岩にスリングをまわしたステーションや下降用のボルトが随所にあるのでランナーは豊富に取ることができます。



ルート前半はリッジ上を行くか北壁側に巻くか、後半はリッジから離れずに細かく左右に巻くが基本のようです。岩はコンパクトなクォーツァイトでクラックや大きなホールドが豊富です。よほど悪いルートファインディングをしなければブーツでも困ることはなさそうです。自分たちは最後まで同時登攀を続けコルをスタートして4時間後に頂上に到着。この頃から曇りだった空に青空が見え始めました。頂上からは360度の展望。近くはIllecillewaet GlacierやAsulkan, Bonney グループの山々、遠くはBagabooやColumbia Icefieldなども見えました。素晴らしいピークでした。

頂上で歓喜するジュンヤ

Illecillewaet Glacier

Illecillewaet Neve

下降は南稜をしばらく下り途中で西壁の中に走るバンドへ。それを北へトラバースしNWリッジに合流。これで頂上ブロックを歩いて迂回したことになります。あとはクライムダウンもしくはラッペルで高度を下げ途中から西壁のスラブに作られたラペルルートを下降します。この下降ルートの詳細はパークスのインフォセンターで資料がもらえるので事前に手に入れておいたほうが安心です。ただ多くのクライマーがクライムダウンした方が早いと言ってますね。他パーティーがいるときなどは確かにその方が早いかもしれません。自分たちは頂上からラッペル終了まで3時間でした。

その後駐車場まで駆け降りてなんとかあまり待たせずに妻と両親に合流。Perly Rockというトレイルを踏破できたようで皆満足気でした。よかった。

9月は仕事に追われクライミングができない予定なので、夏季アルパインクライミングはこれにて登り納め。ここ一年色々と一緒に登ってきたジュンヤもキャンモアを引き払い南へのクライミングトリップへと出かけてゆきました。両親の滞在もあと数日。ロッキーは次第に秋らしくなり哀愁漂う季節になってきました。あとひと月はお仕事モードで頑張ります。


Mt.Sir Donald Climbing Memo

ギア:
カム×3(キャメロット紫~赤)
ナッツ×半セット(中くらい)
各種スリング×多数
アルパイン・クイックドロー×8

タイム:
4:00 Trailhead 1250m
7:30 Uto-Sir Donald Col 2535m
11:30 Mt.Sir Donald Peak 3284m
17:00 Trailhead 1250m
Total: 13:00

その他 :
コルとコルの下にビバーグサイトあり。両ビバーグサイトには簡易トイレ、コルのビバーグサイトにはフードボックスも設置されている。水は最後の小川から運ぶか雪を溶かすか。眺めがとてもよく日当たりも良いので時間に余裕のある人はビバーグしてのんびり登るのもまた一興。



金曜日, 8月 28, 2009

8/23 Mt.Louis "Homage for the Spider Ⅲ5.9"

キャンモアからバンフへハイウェイを車で走っていると、ある一時だけカスケードマウンテンの左に尖った岩塔が見えるときがある。ある程度まで森林で覆われている周りの山と明らかに違う、まったく木の生えていない岩の塊。それがMt.Louis。アプローチが片道3時間ちかいということもあり何となく敬遠気味でしたが、やっとこさ登ることができました。いくつかあるルートで選んだのは“Homage for the Spider”。このルートは面白いという感想を多く聞いていたので選んでみました。クライミンググレード的には一番難しいものでしょうか。


ルートは上の写真の矢印で示されている北東バットレスにあり、東面を回り込んだところから取り付きます。東面下から見上げたのが次の写真。顕著なコーナーをピナクルまで辿り、そこから左の壁のコーナーに移りバットレスの上まで抜けます。

最近特に朝焼けが綺麗 秋ですねぇ

5:00 バンフから車で5分のCory-Edith Pass Trailheadからスタート。Edith Passを目指しひたすら暗闇を歩く。ここは熊出没地帯なので声を出しながら。
7:00 樹林帯を抜けMt.Louisが姿を現す。朝焼けが綺麗。今日も快晴のようです。
8:00 壁の下に到着。最初はしばらくスクランブル。かなり脆い部分もあるので慎重に。
9:00 クライミングスタート。各ピッチの内容は以下の通り。各ピッチの長さはだいたいの数字。各ピッチともボルトステーションが整備されておりグレードは5.8から5.10aの間。

1p : 顕著なコーナーをひたすら40m。途中からクラックが広くなりキャメロット4サイズへ。そこまで大きいカムを持ってきていなかったのでランナウト。


2p : そのまま同じコーナーを直上55m。ステミング、ジャミングなんでもありの楽しいピッチ。


3p : コーナーは続いているが脆くなってきているのでビレイからフェースとスラブを直上50m。クラックは豊富。ボルトの打ってある小ピナクルで切る。左に黒い流水の後のある顕著なコーナー(次のピッチ)が良く見える。
4P : ピナクルから左に脆い岩をトラバースしコーナーへ移動。直上か左の大きなピナクルまで巻いてまたコーナーに戻るか二つのルート取りがある。ぼくらは直上。こちらの方がやや難しいらしいがむしろ岩もしっかりしていて快適。途中にボルトのあるレッジがあるが無視して50m伸ばして大きなレッジできった。



5p : コーナーを50m。ハンドからチムニーサイズのクラック。もちろんホールドは豊富にあるので難しくはないが表面がざらざらしているのでレインジャケットなど着ている人は裂けるので注意。コーナーが終わり地層と地層の間にできた回廊(地層が垂直なので)のようなところで終了。確かに中世ヨーロッパの村にある路地のような通路。チョックストーンがシュール!


6P : 回廊を奥まで進みチムニーを登って終了。この後はリッジ沿いに頂上までスクランブル。特に難しいところはなし。


そして頂上に到着。

頂上から 氷河で削られたU字渓谷が延々と

下降は西壁に30mおきにボルトが整備されておりロープ一本で下降が可能でした。ただしガリー状のところを降りるので他パーティーがいるときは落石に要注意です。地面に降りた後はふみ後を辿ってガーゴイルバレーまで歩いて下り、朝歩いたトレイルへ合流。デポ品を回収してひたすらトレイルを戻ります。

所要時間は、
取り付きまで3時間
取り付きからピークまで6時間
下降1時間
トレイルヘッドまで(急いで)2時間半

持っていったギアは、
ダブルロープ2本
カム1セット(キャメロット3まで)
ナッツ1セット
ランナー多数
で少し余る程度でした。

岩質はカナディアンロッキースタンダード(やや脆い)ですが、クライミングやルートはなかなか面白いルートでした。アプローチがだらだらと長いので早朝スタートがマスト。カインルートを登っている別パーティーが時間切れで降りてきていました。次第に日が短くなってきている今日この頃です。


日曜日, 8月 23, 2009

8/22 Mt.Temple East Ridge Ⅳ 5.7

毎年夏に行こうと思いつつも行けていなかったテンプル東稜。ハイウェイを走ると大きく見えてくるマウントテンプルから東へエレガントに落ちている稜線。形、大きさ、山そのもの、どれをとっても登る意欲を刺激してくる。8月下旬の悪天候から一変して最近の晴天がルート上の雪を溶かしグッドコンディションが到来。スコーミッシュから帰ってきたジュンヤを早速連れ出して登ってきました。

Mt.Temple East Ridge 

写真はモレーンレイク湖畔から撮ったもの。ルートの核心は中腹に立つBig Stepという壁。といってもプロテクションの良く取れる130mの5.7から5.6。むしろルートにバラエティを加える楽しいところ。本当の核心はルート前半(点線辺り)と後半(左へトラバース後)のルートファインディングでしょう。

☆ルート詳細

ルートはモレーンレイクから道路を2km戻ったアバランチパスからスタート。パスを詰めると自然と右にピナクルの立つガリーへと入ってゆく。それを最初の岩壁まで詰め、次にその岩壁を右にトラバース。最初のガリーを50mほど登り次のバンドへあがる。その後は左右に幾本か並ぶガリーのひとつを選び次のバンドへ。そのバンドからも同じようにまたガリーを選び次のバンドへ。ガリーはまだ続くが傾斜が増してくるのでそろそろ傾斜の落ちてきている稜線へあがる。ここまでが下部。ルートファインディング的には一番難しいところ。その後は稜線沿いに登りBig Stepへ。


最初のガリー 多くはClass4ぐらい 時々Class5

柔らかい朝日を浴びつつ稜線を辿る

稜線へ上がると景色が開けMt.Babelが朝日を受け始めていた

Big Step前の稜線で一箇所露出感抜群の8m

Big Step

Big Stepの内訳は5.7 25m、5.7 60m、スクランブル、5.6 50mといったところ。稜線の左側の弱点をついてゆく。ところどころにピトンがあり各ビレイは快適なテラスで取れる。クォーツァイトはホールドがしっかりしているのでアルパインブーツでも問題なく登ることができた。ただし濡れていると良く滑る岩なので怖いだろう。

Black Towers全景
稜線を詰める前にこの辺りでExit Gullyの観察を念入りに

そして再度稜線に戻りそれを忠実に辿ると左にBlack Towersへトラバースしてゆくバンドが近づいてくる。しかしバンド自体にたどり着くには目の前の石灰岩稜線を登らなくてはならない。左に巻きつつバンドまで上がれそうな気がするが右から巻いてなるべく稜線から離れないように登りバンドへ。岩質がクオーツァイトからシェール、石灰岩へ変わるところなので脆い岩がいやらしかった。


今回辿ったExit Gully

細かい浮石をガラガラ落としながらトラバースし雪解け水が流れるのガリー状のあたりでひとつ上のバンドへ上がる。Black Towersをいくらかやり過ごしExit Gullyを探す。いつくか上まで抜けるガリーがあるが自分たちはロープ無しで登れるガリーの中で一番左のものへ取り付いた。ガリーは雪崩や水で磨かれた階段状。時々ピトンが打ってあったがロープ無しで登る。ただし時々脆いブロックもあるので念入りにホールドを確かめながら登るほうが良い。

落ちたら止まらない斜度が続くExit Gully
慣れていない人にはロープが必要 ランナーはクラックで取れる

ガリーを抜けると待望の頂上氷河。氷河は頂上稜線を辿れば問題なし。時々小さなクレバスがあるが飛ぶか這うかして越えることができた。頂上にてノーマルルートと合流。あとはノーマルルートのガレを飛ぶように駆け下りセンチネルパス、ラーチバレー経由でモレーンレイクまで戻る。

そして頂上氷河が目の前に

頂上へのリッジ

頂上にてノーマルルートと合流
風は強いが良い天気でした


登りは9時間(5:30-14:30)。下りは3時間(15:00-18:00)。下りは急いだが登りは写真を撮りながら、あと特にルートを間違えないようゆっくりと確認しながら登ったので標準からやや遅いぐらい。

☆感想
岩質はお世辞にも良いとは言えませんが、ぼくが今までカナディアンロッキーで登ったルートの中ではルート内容、ロケーション共にトップです。こんなに面白いルートがこんなにも近くにあることに改めて驚きました。いわゆるトポと相談しながら登るロッククライミングではなく、目の前の状況を見ながらルート選択に頭をひねり、ロープをつけるかつけないか迷い、ロープを使わないときはで軽い緊張感を感じながらどんどん登る。そうしてひたすら山の頂を目指す快感に酔いました。見慣れたモレーンレイク周辺のまた違った景色も楽しみの一つです。カナディアンロッキーに来たクライマーには是非ともお薦めしたい名ルートです。かつてFifty Classicsに選ばれただけありますね。

頂上から宝石のようなモレーンレイクを望む

土曜日, 8月 15, 2009

8/2 Summer vacation in Squamish

北米を巡るツアー中の横山"ジャンボ"とチヒロちゃんに付き合ってもらい貴重なサマーバケーションへ行ってきました。当初の予定ではバガブーへ篭る予定でしたが自分の仕事が終わるなりいきなり悪天候到来。こりゃ駄目だということで、行き先を西海岸のスコーミッシュへ変更。結果的にはボルダーあり、トラッドあり、スポーツあり、マルチピッチありのとても充実した9日間になりました。現地ではキャンモアを去りクライミングトリップ中のヒロくん夫妻に再会し、キャンモアのクライミング仲間にも会いなかなか賑やでした。来年もサマーバケーションを取りたいなぁ~とガイドらしからぬことをすでにたくらんでおります。クライマーたるもの夏に仕事だけしてるというのはのはちょっとね、あまり現実的ではないですよ。

Petrifying Wallの眼力鋭いチヒロちゃん


久々に会ったらすごい肩筋になっていたトモカ氏


ゾンビルーフをさっくとRPしていったチョー強い若者 
はんぱない身体張力だった



どんどん体を搾ってゆくジャンボ

と、こんな具合に色々触って楽しんできたわけです。さぁ仕事仕事。