木曜日, 1月 28, 2010

2/24-26 バックカントリースキー、偵察、そしてSea of Vapors..

アクティブな三日間があっという間に過ぎ去って行きました。

 初日。クライミングジム勤務明けでばたばたと準備してカナナスキスのBurstall Passへ。昨年Mellow Life・亮、淳也と一緒に行ってよい雪を堪能した場所。今回も期待通り良い雪でした。写真はハードスラブの上に乗った密度のとても低い雪を楽しむ妻O.J.とキャンモア滞在中のChi。滑りながら笑ってますね。そんな感じのコンディションでした。それにしてもここは雪はいいけど歩きが長い。

ふわふわの雪に自然とこぼれる笑み

 翌日はジャンボと未踏のルート探し。ジャンボはスノーシュー、自分はスキーという足回りでひたすらラッセルしてルートの取り付きまで行ってみる。それにしても雪が軽く、スキーはいいがスノーシューが潜りまくる。自分は軽いラッセルで進むがジャンボがかわいそうなくらい潜る。まぁ体力は自分の数倍ある男なので頑張ってもらってルートを観察してきました。そして目の前に出てきたのは。。なかなかかっこいい壁ではないですか。思ったよりも氷はないが手ごわそうなラインはありました。写真をみつつイメージを膨らませ手に汗握るとしましょう。

なかなかかっこいい壁じゃないですか!

 そして三日目はバンフの裏山 Mt.RundleのTrophy Wallにある"Sea of Vapors" Ⅴ 5.8 WI5+ 165m。

Sea of Vaporsは右の途中で離れている二本の氷を登る

 ランドルの中腹にある壁に今にも剥がれ落ちそうに張り付いたエレガントな白いライン。ハイウェイからも見え、いつもいつも下から眺めていたルート。いよいよそいつに挑戦する日が来た。しかし、なんでこんな疲れている日に来てしまったのだろうか。慢性的な疲れが溜まり足が重い、しかも暗くてアプローチで迷う。さらにはなぜかアイスクライミングのマストアイテム・ヘルメットを忘れてしまう!クライマー失格な自分。ネガティブな要素が多すぎるがだましだまし急斜面のアプローチをこなしてゆくととうとうTrophy Wallがその姿を目の前に現した。ジャンボが異様に興奮しだし、こちらは嫌でもボルテージが上がる。アプローチの急斜面をこなしてルートを間近で見上げるとまるでオーバーハングしているかのような迫力。

我々はボウバレーを覆う雲の上  

 緩斜面の氷と雪壁を登り1ピッチ目へ。ヘルメットを忘れた自分は強制的に安全にビレイできるピッチをビレイすることになり、最初の薄い氷を慎重にジャンボが登る。そして2ピッチ目はジャンボが岩のトラバースから岩に危なげに張り付いた薄く、不規則な氷、そして延々と続く傾斜の強い(というかルート全体がかなりぶっ立っている)氷にひたすらロープを伸ばす。3・4ピッチ目はビレイヤーに落氷の可能性があるのでヘルメットを忘れた自分がリード。厚さも不規則性も許容範囲な氷を氷の終わるこ場所までリード。最後は激しいシャワーが降り注ぎその激しさは沢登り級。二人ともすっかりびしょ濡れになり震えながら下降しました。


 朝の美しい雲海。壁を取り巻く幻想的な靄。素晴らしいクライミングと露出感から来る不安と快感。そしてやけどしそうなほど熱いパートナー。おまけに美しい夕焼け。実に、実に充実感溢れる一日でした。


土曜日, 1月 23, 2010

1/21 Ice Climbing "The Nemesis 160m WI6"

最近ちょっとづつ日が長くなってきているのを感じます 朝焼けのMt.Whymper

 ほぼひと月前にJNY(日本に帰国)と登ったThe Nemesisへもう一回行ってきました。

 ネメシスといえばカナディアンロッキーを代表するアイスルート。パートナーのジャンボも一度は詣でておいたほうが良いし、自分のトレーニングにもなるので二度目でも全然良い。今年のネメシスは状態がよくまったくWI6というグレードはないのでかなり気楽。疲れのたまった日には丁度良い。一昨日のSuffer Machineの教訓を生かし今回はスキーとスノーシューでアプローチ。雪が降っていなくて気温も高いといってロッキーの雪をなめてはいけません。ここいらの雪はアプローチが楽になるほど安定しない。クラストはしても下層の雪が砂糖のようになり手に負えなくなることも多々有り。スキーとスノーシューのお陰で今回は楽でした。朝焼けもやたらと綺麗だったので写真を沢山撮った。

Stanley Head WallのThe Nemesis周辺

1・2ピッチをつなげると70m 最後の10mは同時登攀

3pのジャンボ

 クライミングは1・2ピッチをつなげて登ったりしたので3時間半ほどで終了。車に着いても明るく、車窓からの風景がとてもきれいでした。疲れがたまり気味だったのでこれくらいでいいかな。次回はもっと厳しいのに行こう。

木曜日, 1月 21, 2010

1/18.17 Bear Spirit and Suffer Machine


 ながーい風邪からやっと復活!思えば辛い年越しと新年でした。新年会なのに水とお茶を飲んでいたり、咳がひどくて全然眠れなかったり、おまけに鼻腔から歯茎に感染が移って歯まで痛くなったり。何よりも辛いのはいくら良く寝ても全然良くならない!変な病気に掛かったかと思いましたよ。

 復活したのでクライミング再会。とりあえずクライミングジムで二日慣らした後、まずはミクストクライミングのクラッグエリア・Bear Sprit。バンフから車で10分、徒歩40分のこじんまりとした岩場。簡単な氷が2本、ミクストクライミングルートが10本ぐらい。M6からM9 までリードやらトップロープやらで登り、とにかく鈍った上半身を鍛えなおし。ここはハフナークリークほど混まないのでいつも居心地がよろしい。

M7のナイスルートを登るジャンボ

 そして翌日は3度目の挑戦、Stanley Head Wall, Suffer Machine V M7(or 5.6, A1) WI5, 200m。今回は世界のジャンボという強力なパートナーと共に。

Suffer Machine 赤線が大まかなライン

 最近あまり雪が降っていなかったのでなめてつぼ足で行くが、何とも安定していない雪でラッセルを強いられアプローチに2時間以上掛かってしまった。最初のピッチはM7かA1。ジャンボが果敢にフリーで行くが一部かなりホールドが悪く何度か落下。結局そこはエイドで抜け残りはすべてフリーで登っていった。しかも途中から弱点を突いていないボルトラインから外れ、ランナウトしながら薄い氷へ大胆なトラバースをこなしていった。散々なスタイルでフォローしてみてそのボールドさと冷静さと確かなテクニックに脱帽しましたよ。いわゆる“格”の違いってやつを見ました。今の自分では絶対にリードできないな。

本日の核心はこのトラヴァース (Photo by ジャンボ)

拡大するとこんな感じ(笑) フォローなのに悶絶している自分

2ピッチ目を自分がリード (Photo by ジャンボ)

3ピッチのジャンボ 氷のど真ん中を登ってゆく

 2-4ピッチは氷。ながーい氷。各ピッチ50mから55mぐらいで、WI5-WI4の傾斜が続く。最後のピッチはWI4 ぐらいなのに前腕とふくらはぎが悲鳴を上げなかなかスピードが上がらなかった。アイスもこれぐらい傾斜と長さが続くと非常に充実感あります。トップからひと月前にJNYとセットしたアバラコフを利用しながらさっくと地面まで下降。9:30スタートで16:00ぐらいに下降終了。3度目にしてやっと完登できました。やった!

金曜日, 1月 15, 2010

『銃・病原菌・鉄』 ジャレド・ダイアモンド




 また読んだ本のことについて書きますが、それはイコールあまりクライミングをしていないということです。あまりクライミングをしないで本を読んでいるということは、残念ながら、イコール体調が悪いということ。なんか先月の中ごろから咽頭系の調子が悪く、やたら炎症を起こしていて今は抗生物質を呑んで抑えているところなんですね。咽頭の感染が歯茎に進んで歯痛まで起こしておまけに咳の止まらない数日間などもあり、心身共にやられています。早く復活したい。

 えー、今回読んだのは『銃・病原菌・鉄』という大ヴォリュームな本。人類史に関する本ですが、焦点となっているのは「なぜ異なる大陸で人類は異なる発展を遂げたのか?」という謎。著者はすぐにある特定の人種の生物学的な優位性を否定し、文明の生まれた地域の環境的な差異を細かく検証してゆきながら文明の発展する方向性、伝播性、その盛衰などを考察してゆきます。環境的な差異でまず重要とされるのは栽培化に適した食物の分布、家畜化するのに適した動物の分布。なぜなら食料生産が始まり人口が増え集権化された社会ができると共に、技術や軍事力を高める余力がつく。するとヨーロッパ人が新大陸アメリカに進出していったような「持てる者」から「持たざる者」への流れが生まれてきます。
まぁ、ここまでは一般的な話なんですが、ひとつ自分には目新しかったのがそういった他大陸の侵略において大きな役割を果たした『病原菌』の存在。実はこの病原菌を育む要因というのは、「動物の家畜化」にあるということ。豚インフルエンザなんかもそうですが、多くの病原菌は動物対象として存在していて、それが変異して人間に感染するようになるそうです。しかしそういった感染経路を作るには動物が人間にとって身近である必要があり、家畜化というのは病原菌にとって新たな宿主を作る格好のイベントだったと。アメリカ大陸では動物の家畜化が、それに適した動物の少なさゆえ限定的だったのに対して、ユーラシア大陸では家畜化可能な(要は家畜にして有益な)動物の種類が多く、人間と家畜の歴史も長い。その長い歴史のなかで天然痘やらなんやらをどんどん培養して、侵略者と一緒にアメリカ大陸に輸出していった。天然痘は侵略者がアメリカ原住民を殺すよりももっと早く、しかも勝手に、敵の人口を減らしてゆく。そしてヨーロッパ人たちはすでにその病気に対して免疫を持っている。なんともアメリカ先住民に対しては不利な戦いだったわけですね。
 
 あともうひとつ面白かったのは、農耕など進んだ技術を持って別の地域へ進出していった民族がそこの環境に適応する形で狩猟採集民族へと逆戻りしていったパターンが多数あるということ。そしてそれと同じようなパターンがさらに高度な文明のなかでも起きているという事実。たとえば鎖国中の日本で銃の製造・使用に厳しい規制がひかれ江戸時代にはまったく銃の改良が行われなかったこと。ペリーさんがやってきて日本人は大砲の威力にたまげたらしいけど、もし江戸時代にどんどん銃器の改良が行われればそんなことにはならなかったかもしれない。中国でも多くの技術が生まれそしてヨーロッパとは違い多くの技術が失われていったようだけどその原因を国のまとまりに説明を求めているところなんかは結構面白い。ヨーロッパはずっと色んな国が入り乱れてある技術がある国で否定されても、隣の国がそれを選択することもある。しかし、中国は昔からひとつの国にまとまっている時間が長いからひとつの政策が何か有益なものを葬りさってしまうと、その技術は生き延びることができないという説明。
 
 上に書いたのはこの本のなかの本当に一握りの部分ですが、人類史を動かしたさまざまな要因を東アジア、太平洋域、オセアニア、新旧大陸の衝突、アフリカ大陸それぞれで具体的に検証しているので他にも興味深いトピックが満載でした。仕事柄ユーラシアからアメリカ大陸への人類の移動に関しては身近なトピックでしたが、その後アメリカ大陸でどう人類が発展していったか、それがユーラシア大陸とはどう異なっていたかなど特に興味深く読みましたね。

TEDで著者の公演を見つけたので貼り付けておきます。いかに文明、社会が崩壊するか、という公演ですがこの本と重なるところも沢山ありますね。“View Subtitle”をクリックすればサブタイトルを表示することもできます。もちろん日本語も。