火曜日, 3月 25, 2008

クライミング再開

 

 ホワイトホースでの冬の仕事を終え(まだ支店長やオフィススタッフは引き続き働いていますが)、ベースキャンプのキャンモアへ戻ってきました。このロッキーの町に帰ってきたということは、クライミング再開ということです。車の購入やワークビサの申請、その他色々なやるべきことはありますが、とりあえずクライミングです。ということですでに何回かクライミングジムへ足を運んでいます。
 
 しかし、急に打ち込みすぎたのか、ただ運が悪いのか、それとも自分のせいなのか分かりませんがいきなり首を痛めました。自分では首捻挫と呼んでいる一年に一回はやってしまう症状です。3,4日で大抵はなおるのですが痛いのが首なだけに生活全体に影響があり結構憂鬱です。腰も痛いし、首も痛いしなんだか身体がおかしい今日この頃。ジムのホールドに触るのも3ヶ月ぶりなので指があっという間にぼろくなりました。大して難しい課題はやっていないのにこの有様。ちと先行きが不安です。





土曜日, 3月 15, 2008

行方知れずの青年






お客さんをホテルへ案内する仕事をしている。

色々なお客さんがいる。
そのなかでも少し前に案内した青年はちょっと変っていた。
よれたジーンズに北緯60度の街に似つかわしくないよれたジャンパー。
旅をしているようだけどあまり目的もなく、
会話もはっきり言ってあまり面白くない。
コミュニケーションが上手くなく、
自分自身のこともオーガナイズできていなくて、
しかも時間にルーズ。

少し面倒だな、と思った。

数日後、そんな彼を今度は反対に郊外のホテルから街へと送った。

相変わらず予定も目的もなく、
ただ南へ向かう、それだけが決まっているようだ。
何度も”何がしたいの?”という質問が喉まで出掛かった。
しかし、その質問はしてはいけないような気がした。

そんな青年を助手席に乗せて運転していると、
なんだか昔の自分を乗せているような気がしてきたからだ。
目的はなく、希望は少なめ、
それでいて、とにかくどこか別の場所へ行きたくて、
でも行ってみたら何か違っている。
そんなことの連続。
幻滅して、何に幻滅しているかと考えてみたら、
結局また自分自身に幻滅していることに気づく。
そしてまた別の場所へ。
そんな悪循環。

”何がしたいの?”

怖い言葉だ。
自分で”何がしたいのか分からない”というのは平気でも、
人から”何がしたいの?”と聞かれるのは怖かった。
だから何となくそれは言ってはいけないような気がした。

そんな青年に何かしっくりくる言葉をかけようと思った。
ぼくにはにはそういう言葉を掛けてくれた人たちがいて、
時に救われるような言葉もあったから。

でも、結局街につくまでに彼の役に立ちそうな言葉は見つからなかった。
だからとりあえず笑顔で青年を見送った。
そうすると彼も笑顔を返してくれた。
頼りない笑顔だった。
壊れたバックパックは重く、
やぶれたジーンズはあまりに寒い。

言葉ひとつ見つからない頼りない大人である自分。
そして、雑踏に消えた頼りない青年。

雑踏に消えた彼の行方はもう分からない。
そして、自分の行方もまた分からないことに気づいた。

金曜日, 3月 07, 2008

No Title



"What matters in life is not what happens to you
but what you remember and how you remember it."

Gabriel García Márquez


写真の数ある特殊な力に、記憶の再構成、というものがある。

記録され四角く切り取られた風景が、もともと持っている意味を失い、時間からも、写し取られている事象からも独立して、まるで歴史から取り残されたように宙に浮かびあがっているように見える。
自分の人生のひとコマなのに、それは他人の人生のようにも見える。他人の人生どころかまるで誰かが作り出した虚構ようでもある。撮影者からも被写体からも切り離され、自由で、独立している。

いいな、と思える写真。

切り離され、意味を失い、完全に再構成され、この世のものではなくなったもの。そんな写真あまり見たことないけど。でもたまに目にすると何ヶ月も心の隅に居座り続ける。とても地味で、強力で、独立した、幽霊のような写真。

そんな写真が撮りたい。