金曜日, 5月 29, 2009

5/28 Return to Yam "Direct Mail 5.10c,220m"

先日レスキュー騒動を起こしてしまったマウントヤムナスカに再び行ってきました。それなりに学んだことがあったのでそれを実践することと精神的トラウマの克服を兼ねて。

登ったのは比較的壁の低いWest EndにあるDirect Mailというルート。ルートが出来たのは2004年。新しいルートはフェースに最小限のボルトを打って引かれていることが多いので、どちらかというとコーナーに挟まっているような脆い岩が少ないです。復帰戦なのでなるべく脆い岩に悩まされないようなルート選択をしてみました。

1ピッチ目は5.10c,55m。このピッチだけは残念ながら脆い、とガイドブックにも書いてあったりましたが、脆いと書いてあればとことん脆いのがヤム。見た目からしておっかないのでパートナーの若きクライマーPhilipにリードを譲りました。まぁ復帰戦ですからね…。実際登ってみると今までヤムで登ったどのピッチよりも怖かったです。岩の崩壊と共に落ちたばかりなのでそんな感じがするだけかもしれませんが。それにしても果敢にランナウトしてたな。今のぼくには出来ません。

おおー、いきなりのランナウト 気をつけろPhilip!

2ピッチ目は5.9,55m。写真ではボロそうですが灰色の岩はフリクションが良く、しっかりとしているので快適。

見た目よりも安定してる2ピッチ目

3ピッチ目は5.10b,60m。ここからは自分でリードです。時々傾斜が強くなったり、浅いグルーブ(溝)に浅くカムをセットしたりしますが、岩さえ安定していれば大丈夫。ところどころにボルトも打たれ快適。

次第に傾斜の上がってくる3ピッチ目

そして核心の4ピッチ目。5.10c,40m。オーバーハングしたコーナーを登り、右にコーナーのあるアレートをうんぬんとトポに書いてあるけど、下から見ているだけでは意味不明。とりあえずボルトの見えた方に登って行き、あとは成り行きに任せて弱点を登ってゆく。ここ核心ぽいな、というところでプロテクションを取るクラックがないのでどこかにボルトがあるはずと探していると、なんとハンガー(カラビナを掛ける金具)のついていないボルトの芯だけが岩から生えてました。予備のハンガーも使えそうなギアもないので仕方なくランナウト(支点を取らずに登り続けること)。そのうちカムが使えるようになり最後のルーズなブロックを際どく避けてやっとこさビレイ点に到着。

なぜわざわざ核心部のハンガーがないのか?!
次回からは予備のハンガーとナットを持参すべきか…

そしてそこからは20mほどの簡単な登りと歩きで終了点へ。

核心部では冷や汗ものでしたが、これもヤムナスカならでは。短いルートですがエキサイティングでスパイシーな復帰戦になりました。ちょっとスパイシー過ぎだった気がしないでもないけど。

月曜日, 5月 25, 2009

写真掲載


Lost Arrowというクライミングギアや登山用品の輸入販売をしている会社のカタログとウェブサイトに写真を使っていただきました。カタログでは裏表紙、ウェブサイトではホームぺージの写真のひとつに。印刷媒体に自分の写真が使われるのってやっぱり嬉しいです。撮影場所は去年秋に行ったユタ州モアブのインディアンクリーク。クライマーは冬はウィスラーでヘリスキーガイドをしている松永純一さん。

5/22 Yam "Necromancer 5.10a 410m" & Rescue


先日ヤムナスカのNecromancerというルートを登りに行って、そこで起こした事故の顛末です。

事故前
8:30 パーキング出発 快晴。ひんやりとした空気と暖かい太陽がが初夏の雰囲気。
9:20 Necromancer取り付き 
自分が最初の3ピッチをリードすることになり、5.7ながらなかなかスパイシーできれいなクラックを45m登り、レッジでビレイ。パートナーがフォローし、ギアを整理して2ピッチ目を登り始めたのが10:00ちょっと過ぎ。2ピッチ目はビレイから少し左の岩の脆い凹角状を5mほど登り右へトラバース気味にBroken Terrainを登って顕著なコーナーへ入り込む。

Necromancer 1P

事故発生
脆い凹角状の部分を落ちそうなブロックに気をつけながら登り0.75サイズのキャメロットをやや下開きのクラックにセット。そして右へトラバースを開始。ここから傾斜は緩くなり小さなレッジが増える。右足をそんなレッジに乗せて加重してしばらくしてから雷のような音と共に50cm×50cmぐらいの大きさで足を乗せていた部分が崩壊。自分は5mほど落下して最初に決めておいたキャメロットが墜落を止める。しかし、崩壊した部分がビレイ点のほぼ真上だったためビレイしていたパートナーの左足の甲に落石が当たってしまう。痛みと腫れから骨折もありえる状況。幸い落石が当たったのは足だけでかすり傷以外に出血はなし。

Necromancerは中央よりやや右

下降&レスキュー
足は着けないが動くことはできるので一つの制動器で二人同時に懸垂下降することにする。落石が起きる可能性とビレイ下のエッジを顧慮してローワーダウンは却下。二枚のナイフブレードをナッツ二つで補強しアンカーを作り、バックアップでカムをセットし強度を確認がてらまずは自分ひとりで数メートル懸垂下降し絡まったロープを整理し、ロープの経路、下降する壁を確認。ビレイ点に戻りパートナーを自分と同じ下降器にセットし背負うような格好で懸垂下降し地面へ。安定した場所へ移動しスプリントを当てて左足首を固定。ヘリの費用をパートナーが心配していたので確認するためにオフィスへ電話するとヘリと救助者が丁度待機していたらしく、折り返しカナナスキスカントリーのレンジャーから電話が入り30分ほどでヘリ到着。ちなみにヘリ費用はフリー。一度頭上を旋回しエリアを確認してからパーキングそばのパッドへ降りる。そして救助者二名を30mぐらいのワイヤーでぶら下げてくる。救助者を降ろして、その二人でパートナーの足の固定を補強、吊り上げ用のハーネスを着せるとまたヘリが飛んできて救助者一人とパートナーを吊り上げてパッドまで。またヘリがやってきて今度はもう一人の救助者とパートナーの荷物を持って飛んでいった。自分は怪我していないので歩いて下山。駐車場でパートナーと落ち合い病院へ。

二人のレスキュー到着

診断
キャンモアの病院でレントゲンを撮り診察。結果は全治2週間ほどの打撲。落石の規模と腫れ具合から骨が折れるか欠けるかしていると思っていたので、うれしい診断結果。

考察
春の岩場の危険さを改めて感じた事故でした。冬の間にクラックに詰まった水、雪、氷で岩が脆くなっていて落ちる刺激を地雷のように待っているのが今の季節。たとえ比較的人気のあるルートやエリアだとしても、この時期に登るときは用心し過ぎることはないのだと思います。あとビレイヤーの上を登らざるを得ない時に出来ることの再確認。ヤムナスカという壁の性格を考えるとホールドやレッジの崩壊を100%予測することは不可能だけれど、ビレイヤーへ影響が出るときはコミュニケーションで危険があることを再確認すること。例えビレイ点から動けない状況でも身構えることはでき、それだけでも危険を回避することは出来るから。などなど多くは自分への反省。パートナーの早期復帰を心より願います。

火曜日, 5月 19, 2009

5/18 Planet X

三連休の二日までは天気が良かったのですが、最終日は雨。時々雪が混ざったりして寒々しい天気でした。クライミングもできないならたまには歩くか、というわけで近所にある岩場Couger Canyonの岩場を見に行ってきました。トポに載っていないので今までどこにあるかも知らなかったのですが、スカハで登っているときに知り合いのクライマーから“かなりイイから行ってみろ”と言われた岩場です。

家からだらだらと歩くこと約1時間50分。何度か行っている岩場を通り過ぎ谷の奥へ奥へと進みます。そして教えてもらった通りに支流を遡って行くとありました。その名もPlanet X。でかい…。幅は100m、高さ60mってとこでしょうか。上部に行くほど被っております。

現在のところ5.11c~5.14aまで16本のルートが完成(一部プロジェクト)しているらしいですが、いくつか開拓中のルートもあるような感じでした。北向きで太陽は一切当たらないので夏の暑い時期に集中して通ったら面白そうです。アプローチがやや長いけれどほとんど平坦なので許容範囲。家から歩いてこれること自体が奇跡的。いい岩場見つけました。それにしても早く暖かくならないかなぁ。

金曜日, 5月 15, 2009

5/7 Skaha Trip 2009

Screeching Wall, The Ascent of Mud Man 5.10a

この時期、ここキャンモアは雪が降ったり、雨が降ったり、晴れて気温が上がったりとあまり安定しない天気が続いたりします。なので大抵クライマーで休みの取れる人はBC州のオカナガンバレーへクライミングトリップへ行くのが慣わし。去年同様自分も一週間ほどの予定でPentictonという町のそばにあるスカハというクライミングエリアへ行ってきました。時には岩場にいるほとんどのクライマーがキャンモアから来ている人たちだけという日もあり、キャンプサイトでもほとんどの人が知り合いかクライミングジムで見たことある人だったり。毎年思いますがキャンモアから専用バスでも走らせたらいいんじゃなかろうか。


キャンプサイトは去年と同じBanbury Green Campground。岩場から車で10分の湖の対岸にあり、写真の通りとてもよい環境。ホットシャワーあり、しかも5月第二週末まではクライマーズプライスで一人7ドル。通常期間は30ドル/1サイト(二名)。朝は鳥の鳴き声と朝日で自然に目が覚めます。


キャンプ場から対岸のクライミングエリアを眺める。何となく小さいエリアに見えますが、遠い岩場は徒歩50分以上かかるとか。


去年までは私有地の駐車場にお金を払ってアプローチしていましたが、今シーズンからは専用の駐車場が完成!寄付やら補助金やらでこういうものが出来てしまうのってすごいですよね。アプローチが若干楽になり、トイレもありです。素晴らしい。

Screeching Wall,Watching Bananas Bend 5.10b

今回登った岩場はScreeching Wall, Doctors Wall, Maternal Wall, Elusive Edge, Mornig Glory, The Wave, Fortress。オーバーハングからスラブなんでも楽しめるのはスカハの良いところ。一緒に行った亮、ヒロもせっせと限界グレードに打ち込んで毎日ぼろぼろのぐだぐだになって、次の日はがくがくでした。自分の成果としては5.12aのオンサイトと5.12bのR.P.でした。シーズンの始まりとしてはまあまあではないでしょうかね。

The Wave, Not Fade Away 5.12a


Elusive Edge

木曜日, 5月 07, 2009

5/1 BC Ski "Around Columbia Icefield Peak Bugging" Day3

テントを撤収し日の出と共に出発

最終日。今日の行程はキャンプ地から南へ8km弱の氷原の南端に位置するキャッスルガードマウンテンへ。4:30起床。テントを撤収し、6:00過ぎに出発。途中に余分な荷物をデポし、サスカチュアングレーシャーという氷河方面へ緩やかな下り。ぐんぐんキャッスルガードが近づいてくるけど、帰りの登り返しを思うとちと憂鬱です。しかし、天気は快晴。視界も良好。朝の斜陽が美しく氷原を照らし出していました。

美しく緩やかにうねるラインを一刻の光が描きだしていた
左にCastlegard Mtn. 右に秀峰Mt.Bryce


8:10にシールをつけて登り始め、1時間と少しでキャッスルガードの麓に到着。さすがに三日目ともなると無言でせっせとシール登高するのも慣れたものです。そして、この辺りから登れるんじゃないの、という尾根状のところから頂上へ向けて出発。何となく嫌な予感がしていましたが、小ピークと越えてみると頂上は遥か向こう。しばしリッジを歩いてみると、ひじょーに簡単に頂上まで登ることの出来る斜面が足元に出てきました。しかし、歩いているリッジからその斜面へは面倒なクライムダウンになってしまうという面倒な展開。仕方ないので元の場所まで戻り、さらに山を回り込み正解ルートを登ることにしました。後続のパーティーも自分たちの間違ったルートを登ってきていたので彼らも仕切りなおし。人を信用するものではありませんね。

サスカチュアン氷河方面 真ん中下に間違えてついて来てしまった後続パーティー

間違えたけどせっかくなので急斜面を楽しむ淳也 この後転んでいたけどね

そして12:00、正解ルートをせっせと登りいとも簡単に頂上に到着。標高は3090mと低めですが位置的に氷原を見渡せる良いピークでした。氷原もすごいけど東南西に延々と広がる山や谷や雪のシートが素晴らしかった。

後続パーティーも到着

Summit of Castlegard Mtn.

次なる目標 Mt.Bryce

正解ルートを登ったので下りも楽しむことができました。最初の急斜面を攻め、そのまま山を北に回り込み、休むことなくどんどん下ります。そしてあっという間にサスカチュアン氷河の上へ。ここからデポまでの登りでは日差しが強く風もなかったので汗だく。ある意味今回のトリップの登りで一番つらい思いをした部分でした。

キャッスルガードのナイススロープ 雪も良かった

クラスティーな斜面を攻める

そしてキャッスルガードの楽しい滑走もここでおしまい

荷物をピックアップしてからは重荷で太ももに乳酸を溜めながらの滑走。登り同様アサバスカ氷河の下りはセラック崩壊やらクレバスやらで危険な場所なので、できるだけ早く、転ばず、わき目もふらず、雪上車の広場まで爆走しました。でもやっぱり写真は撮っておかないと、と上のセラックを気にしながら数枚シャッターを切りました。おかげでなかなか良いのが撮れたかな。

アサバスカ氷河をバックに 重荷ながら奮闘する淳也

そして16:00に無事駐車場に到着。キャッスルガードでルートを間違えた割にはなかなか良い時間に帰還できました。それにしてもアサバスカ氷河の上から雪上車の広場まで20分とは…。やはりスキーという道具は素晴らしい。自転車とスキーの発明こそ人類の成し遂げたもっともエクセレントな発明な気がします。

そして最後に落ちがあるのがこのツアーの良いところ。
靴を履き替え、荷物を整理し、さて帰るかと淳也が車のキーを回したところ。・・・うんともすんとも言いません。バッテリーが上がってしまい、しばらくそこで立ち往生と相成りました。いやーしかし、まだ雪上車の営業時間で良かったね。最後まで楽しいコロンビア氷原スキーツアーでした。この時期にはまたがっつりと氷原を歩きたいものです。


火曜日, 5月 05, 2009

4/30 BC Ski "Around Columbia Icefield Peak Bugging" Day2


トレンチを上がりマウントコロンビアへ向かってひたすら歩く
左からMt.Columbia(3,747m), South Twin(3,580m), North Twin(3,450m)

夜中に雪がテントを叩く音で何度か浅い眠りを起こされました。

今日はメインイベントのマウントコロンビア登頂。ホワイトアウトすると何も目標物のないしかも斜度のあまりない氷原上では進むのが困難になってしまうので、今日は特に天気に持ちこたえてほしいところです。登頂まで平均3回も4回もトライをするぐらいマウントコロンビアは天候敗退が多いんですよね。テントから出ると星は見えないけれど、山ははっきりと見えるという高曇り。風も穏やかで気温は-18℃くらいでした。

やや硬く締まった歩きやすい雪面
天気は薄曇り

出発は6:30。まずはトレンチと呼ばれ氷原が標高にして200mほど落ち込んでいるところまで下り。途中先行しているパーティーのキャンプサイトを通り過ぎる。彼は初日に楽をせず自分たちよりも3kmほどマウントコロンビア寄りにサイトを設営していました。この日もかなり早く出発していたようです。

トレンチに下る前 柔らかい朝日を浴びるマウントコロンビア

トレンチからはまずは6kmの緩やかな登り。普段クライミングを好んでやっているので、なぜこんなに緩やかなところをだらだらと歩かねばならないのか!?とネガティブシンキングに陥りそうですが、そこはさすがの氷原地帯。普段のスケール感から明らかにずれた景観のなかを黙々と歩くのはなかなか楽しいものです。やがてだらだらな登りが斜度を増してやっとマウントコロンビアの斜面と呼べる地点まで着きました。ここまでキャンプサイトから10km強。時間にして4時間ほどでした。すでに登頂を終えた先行パーティーとここで交差しました。

雪壁の途中 緩いとこもありさほど難しくはなかった

天候は次第に下り坂で風も吹き始め、北のノースツイン、サウスツインが雲の中に隠れました。雲に巻かれると頂上からスキーで下るのが厳しくなるのでスキーをデポし、イーストフェイスの雪壁をひたすらキックステップで上がりました。雪が程よく深く柔らかかったので問題ありませんでしたが、コンディションによってはクランポン、もしくは雪崩を避けて南稜を登った方が安全でしょう。

最後の雪壁 そして頂上へ

そしてキックステップで登ること標高差400m。3747mの頂上に着きました。薄い雲に巻かれましたが、時折氷原やそこから流れ出す氷河、無限に続くように見える山々が見えました。天候次第で簡単に登れなくなるのでテクニカルな課題を克服したのとはまた別の喜びを感じました。安堵感というか、登らせてもらったというか、何とも不思議な感じです。

Mt.Columbia 3,747m

心配していた天候はどうやら持ちこたえてくれそうです。遥か下界に展開する景色に酔いながら、ぼちぼちとスキーを置いた場所まで下りました。そして、スキーを履いて楽しいパートの始まり。といってもゆるーい下りなのでひたすら直下降です。それでも登りと比べれば弾丸並みのスピード。あっといまにトレンチの底へ着きました。ここからは初日をツケを払わされる登り返し。異様に遠く感じる最後の3km。着いたキャンプサイトがまるで我が家のように思えました。そして、寝袋に入って飲むハードリカーの美味いこと。ほんと一発で登れてよかった。サンクス、マウントコロンビア。そして明日はキャッスルガードマウンテン。

月曜日, 5月 04, 2009

4/29 BC Ski "Around Columbia Icefield Peak Bugging" Day1


このアサバスカ氷河の向こうにコロンビア氷原が広がる
いざスタート!

今シーズン最後のバックカントリースキーツアーとしてコロンビア氷原へ二泊三日で行ってきました。当初の予定ではメンバーは四人。しかし、そのうち二名が風邪で欠席。結局いつものパートナー淳也と二人で行ってきました。
 目標はマウントコロンビア。天候の良し悪しで登頂できるか否か決まるのでじっくりと好天期間を待つこと約一週間。好天期間を狙って出かけました。早朝4:30に淳也にピックアップしてもらいアイスフィールドの駐車場に7:30過ぎに到着。よし行くか!というところでなんと淳也がビーコンを忘れるというありえないハプニング。結局この日はのこのことキャンモアまで帰り明日出なおすことになりました。まぁ忘れ物常習犯な(最近はだいぶ良くなりましたが…)ぼくなので彼の気持ちはよく分かります。形あるものは壊れ、どんなに寒いビバークにも必ず朝が訪れ、人は常に忘れ物をする。これ自然の摂理です。
 
そして翌日、4:30ピックアップで長いドライブを経てめでたくコロンビアアイスフィールドの駐車場をスタートすることができました。快晴の下スノードームの岩壁からのセラック崩壊におびえながらアサバスカ氷河を詰めます。氷河を上がりきったところから後続パーティーを眺めていると来ました!セラック崩壊!直接は見えなかったけど結構大きな雪煙が上がっていました。どうやらトレースまでは届かなかったようですが、やはりこの部分はロシアンルーレット的であることは確かなようですね。気をつけても仕方ないけど、とにかく早く歩くしかないですね。

セラックの下を抜けてほっと一息

そしてコロンビア氷原に上がりキャンプ設営。翌日のマウントコロンビアへの行程を考えるとあと数キロキャンプを進めた方が楽ですが、雪を積み上げ整地されているキャンプサイト跡の魅力に負け、そこをベースキャンプとしました。今日の楽を取り、明日の苦を、明後日の楽を選んだわけです。

スノードーム前キャンプサイト 見渡す限り誰もいないというのはよいもんです

キャンプ設営後は三つの分水嶺が集まるというスノードーム山頂へ。ただ歩くだけですが、丸い丘みたいな山なのでなかなか山頂が近づいてきません。微妙に疲れましたが、山頂からのマウントコロンビアが特に立派でした。ロッキーだけでなく隣のパセール方面の山々も素晴らしかった。ただの丘のような山頂ですが、ここに降った雪が北極海、太平洋、大西洋へと分かれて行くと思うと非常に興味深い場所のように思えます。

スノードーム頂上 そして明日登るマウントコロンビア
昼寝したくなるような陽気でした

そして下り。際限のない斜面を際限のない氷原へ向かって滑ります。風紋で滑りにくい斜面を淳也がすいすいと滑ってゆきました。どこでもテレマークターンができる彼。最近特に上手くなったなぁ。感心感心。ぼくは滑ることに強い欲求がないのでテキトーに滑ります。上手く滑るより良い写真を撮るほうに興味があるんですよね。へっぽこスキーヤーの負け惜しみですけど。

マウントコロンビアをバックに軽快に滑る淳也

コロンビア氷原とその南端に位置するキャッスルガード

危険箇所を抜け、氷原らしさを満喫し、目的のピークをひとつ踏めた充実の一日でした。具の少ない炭水化物ばかりの夕食を済ませ、なかなか暗くならない春の夜ですが、明日にそなえ早々に眠りにつきました。

静かな夕暮れに、雪は大きな結晶のまま