木曜日, 3月 15, 2007

北海道・時計まわり9

注・2005年9月の記憶をのんびりと掘り起こしています。



 阿寒を後に帯広方面へ向かいます。最初の峠を越えた後はかなり長い下りと平坦な道をぐんぐん飛ばします。そしてあっという間に足寄に到着しました。ここから南下して帯広に寄るかどうか迷いながらも何となく都市に入るのが億劫になり、気持ちよく自転車で走れることを優先して人口密度の少ない北側ルートを取ることにしました。帯広の平野部に北から入ったところで景色ががらりと変わりました。広大な平野が南に向かって開け、目に入るのは畑か牧場、そして点在する防風林。北を向くとそのまま大雪山に連なってゆくであろう山々が見えました。あまりに長閑なせいか上士幌町に入ったところで急に眠くなり、夏には気球のお祭りが行われるという巨大なキャンプ場によろよろと滑り込みました。まだ昼過ぎだというのにワインをひと瓶開け、空を眺めながらの昼寝。疲労が溜まっていたのかまったく動く気がせずだらだらと飲んでは、ごろごろと横になり寝たり起きたりを繰り返します。あまりに眠いので、これは病気にでもなったのでは、と不安になりましたが特にそういう訳でもなかったようです。ただ昼間から飲み過ぎただけかもしれません。夢うつつに見た流れる雲とぽかぽかと暖かい日差し。とても気持ちの良い午後でした。


そう 眠たいのである

 翌日は狩勝峠越え。富良野と帯広を分ける大きな峠なだけに覚悟していましたが、意外にもあっさりと登りきりました。富士山のように何合目という標識があり、後どれくらい登ればいいのか分かるのは精神的に助かります。その後は富良野平野の南端まで続く下り坂。車と同じ速度で下り、少し富良野方面へ北上した山部にあるユーフレの里というキャンプ場に向かいました。明日はこのキャンプ場の後ろにある芦別岳に登ります。



水の流れをたどり

 ある北海道の登山本で厚い雪をまとった芦別岳北尾根の写真を見たことが、この山を選んだ理由です。うねうねと続く雪稜の彼方に綺麗な三角形をした芦別岳を捉えたその写真。冬に来ることがあるか分からないけれど、その時のために一度登っておこうと思いました。
登山道はキャンプ場の奥から始まります。沢を高巻くようにつけられた道を登ったり降りたりしながら進むので最初はなかなか高度が上がりません。しかし沢沿いの道はしっとりと濡れ山深さが心に染み入ります。そして次第に沢の水量が減り、急登をこなすと北尾根に飛び出しました。稜線付近ではすでに木々が紅葉し北海道の早い秋の深まりを感じさせます。そして南には写真で見たままに稜線が連なりその奥に綺麗な形をした芦別岳がそびえます。左には富良野平野、右には夕張方面の山々を望みながら誰もいない稜線を歩くと時おり赤とんぼが飛び立って行きました。もうすっかり秋なのです。小ピークが多いとスケール感を狂わせるのでしょうか、小さなアップダウンを繰り返すたびに芦別岳が面白いようにぐんぐんと近づいてきます。誰もいない稜線を一人黙々と歩くことの贅沢さを感じながら、最後の岩稜帯を登り山頂に到着しました。


芦別岳 実にナイスな山

 穏やかでとても静かでした。南方には夕張岳、そしてその向こうに無数の日高の山々が続いて行きます。しかし今回の旅ではこれが最後の山です。あとは苫小牧のフェリー乗り場へ向かってゆく道だけが残ります。これで山は終わりか、と少し寂しいような気がしました。小学生の頃、暗くなるまで遊び、ぼちぼち帰らなきゃという時によく感じていたような、何ともいえない切なさを思い出しました。そんな昔の感覚を思い出したことがうれしいような切ないような何とも言えない気分です。しばし山頂で物思いにふけったのち惜しむように山頂を後にしました。しかし、まだまだ北海道には訪れたい山が無数にあります。下山路を駆け下りながら、まだ帰ってもいないのにまたまとめて登りに来ようと考え始めていました。


芦別岳 とりあえず最後の山


あきがきて あきがゆき

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