火曜日, 12月 11, 2007

-Trip Report 6- Resolution Arete 16時間のUp and Down


朝焼けのMount Wilson

Red Rocks のピークの中でもっとも高く、もっとも重量感があるMt.Wilson。道路から眺めた瞬間にこの山を登ることを考えていた。数多くのルートの中から選んだのはResolution Arete 2500feet 5.11d。ピッチ数では21~24ピッチになるこのルートは、Aeolian Wallと隣の壁を分けるリッジに取られている。最後までリッジをたどり自然にピークに至り、他のどのルートにも合流することはない。傾斜のあるリッジなので敗退は考えないほうがいいだろう。とにかく頂上目指して登り続けるのみである。


赤線がResolution Arete  黄線が下降したDogma

このルートこそ今回登ったルート中もっとも取り付きまでの下見が必要なルートだった。古いファルコンのトポではアプローチと下降のことがあまりよく分からなかったので、前日に最新のトポを手に入れることにした。しかし、もっとも分かりやすいと思われる写真と解説があったにも関わらず、取り付き発見はかなりてこずってしまった。これを真っ暗ななかオンサイトでこなすのは今の自分には不可能だろう。面倒くさがらずに行っておいてよかった。

この日は終日曇りで肌寒い一日だった。しかし、夜九時を過ぎる頃、見る見る内に雲が流れ明るい月が夜空に浮かんだ。たとえ暗くなってしまったとしても、きっと月明かりが助けてくれるだろう。人気のなくなってきたキャンプ場の夜は静かだった。ぼくとカンちゃんも長い一日に備えて早々に眠りについた。


Resolution Arete 1 pitch 右上にリードするカンちゃん

6時に取り付くため、朝4時に駐車場を出発した。まだ夜明けまで2時間ある。
Wilson Pimpleという丘の近くからトレイルを離れ踏み跡に入るのだが、どうもそれらしきものが見つからない。カンちゃんが積んだというケルンも見つからずいきなり迷い気味である。しばらく行ったり来たりしていたが、結局これだ、という場所が分からず、それっぽいかな~、ぐらいのところに入って行った。

それにしても暗い。壁は近づいてくるがどうもずれているような気がする。ぼくらが目指すのはメインガリーではなく、その隣にあるとても小さなガリーなのだが、見えるのはただの黒い塊である。とにかく登れるところまで登り、間違っていたら壁沿いをトラバースするしかないようだ。まるで見覚えのない風景である。見覚えがあるかもしれないが暗くてまったくそうは見えない。山のスカイラインと感じる地形から読むしかない。右往左往しながら何か分からないかと目を凝らしていると、踏み跡らしきものに当たった。何となく記憶している踏み跡のようなのでそれに頼って行くとさらに何となく見覚えのある傾斜。どうやら当たりらしい。ぐいぐい登って行くと見覚えのある小さなガリーに着くことができた。ここまで来ればあとは楽である。

予定よりも20分遅れで取り付きに着くことができた。もうすでに朝日が上がろうとしている。余分だと思われる水をがぶ飲みしてカンちゃんから登りだした。

3ピッチほどワイドクラックをたどりレッドバンドからホワイトバンドへ移ると最初の核心がやってきた。5.7Rだが感覚的には5.7Xではなかろうか。壊れてしまいそうなもろいホールドが続き、めったに取れないプロテクション。取れたとしてもかなりマージナル。カンちゃんの手に汗握るリードであった。

小ピナクルを回りこむ4thClassの後にもまた核心ピッチである。5.10の美しいコーナークラックを、これは快適そうだ、と思いながら登って行くと、だんだんと閉じてしまった。ところどころに極小ナッツを捻じ込んで登ってゆくと、これをつかまないと進めない、というバガが出てくる。しかし、これが今にも取れてしまいそうにヒビの入ったホールドなのだ。どう考えても使わざるを得ないのでRPをもう一つ捻じ込み覚悟を決めて突っ込んだ。ホールドは持ちこたえ、何とかフォールせず抜けることができたが、きっと白髪が2本ほど増えただろ。


終盤はチムニーが多い

次の核心は11dのコーナールーフに走るフィンガークラックだ。トポにはアンダークリングとあったが、どう考えてもフットホールドがなくできそうにない。しかし、フィンガージャムをしっかりと決められそうな部分を探り、さらにやや悪いパーミングを見つけ、ムーブのイメージをつかむことができた。カンちゃんに一声かけクラックにぶら下がる。ジャミングが決まり浮いた。そして出口のカチに手を伸ばした。そしてフィンガージャムを解除。がしかし、ここではまってしまった。手を次のホールドに飛ばすことができずフォール。この日唯一のフォールを喫してしまった。一発でムーブが解決できただけに、非常に残念である。

 最後の4thClassを笑顔で登ってくるカンちゃん

この核心ピッチを抜け、フェース部分を抜けると、あとはリッジを縫い、チムニーをつないでいくピッチが続いた。速度も上がり、快適なクライミングのあとは4thClassを数百メートル。そして午後2時20分。所要時間8時間でMt.Wilsonのピークへたどり着いた。ルートの終わりがピークという理想的なフィニッシュにぼくらは喜びの声を上げた。

Mt.Wilson 山頂にて(左)  頂上稜線から 赤いのはCalico Basin(右)

下降もシビアであった。歩いて降りる選択もあったが最新のトポにかなり質のよい写真が載っていたので、ぼくらは隣の壁のDogmaというルートを下降することにした。トポによると70mロープ1本で下降できるという。しかし、ルートのピッチ数は15ピッチ以上あり、森になっている途中の巨大リッジに降りた後のアンカー探しが難航しそうだ。すでに日が傾きかけ、大地に落ちた山の影が長く伸び始めていた。

上部は垂直壁のラッペルなので容易であったが、やはり森に下りた後で迷ってしまった。木に巻かれたアンカーを見つけるのに1時間近くかかり、下降を再開したときにはすでに日が落ちていた。ロープぎりぎりのピッチがあったり、末端10メートルの印を中間の印と間違えてあやうくカンちゃんが墜落しかけるなど、疲れる下降であった。


Dogmaの上部を懸垂中

ラッペルを15回以上繰り返しブッシュを掻き分け、結局夜中の20時30分に月夜のパーキングに到着した。下降とハイクアウトに5時間も掛かかり、結局Car To Carで16時間。クライミングトリップの最後を飾るには相応しい、総合力を試されるルートであった。

こうしてパーキングに着くと同時にぼくのクライミングトリップ、カンちゃんのヨセミテから始まりインディアンクリークを経由したクライミングトリップが終了した。車に入ったとたん汗が冷えて寒気がしてきた。いつしか秋も深まり、冬が近づいてきていたのだ。一路キャンプ場を目指し、あまった食材で手早く夕食を済ますと大して酒も飲まずにテントにもぐりこんだ。そして長い一日を振り返る間もなく眠りに落ちていった。

Reslution Areteは、アンカーも整備され、ボルトもふんだんに打ってあるEpinephrineとは実に対照的なルートである。ルート上で見たボルトは、腐った細いボルトが1本と新しいビレイ用のものが1本のみで、ビレイ点はすべて自分たちで作った。Epinephrineのようなルートがある一方Resolution Areteがある、このRed Rocksの多様さは実にいい。Epinephrineの整備された環境に物足りなさを感じた人は是非このルートを登ってほしい。岩のもろさやグレードを忘れられる何か。とても心満たされる何かを発見できるはずだ。今回のRed Rocksでもっともお薦めしたいルートである。

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